既存の飲料用ストロー事業を見直すことで新たなマーケットの開拓に成功した、岡山のとある中小企業。しかし、過去には「自立のためにあせり、何かしようと自社で企画を考る」ことで、失敗した経験もありました。どのような問題が起き、乗り越えたのかを見ていきます。

技術研鑽から生まれた「タピオカ用ストロー」

試行錯誤が続くなかで、うまく市場をとらえた製品が一つ生まれました。

 

それは2004年に開発したタピオカ用のストローです。当時タピオカ用のストローは、台湾からの輸入に頼っていました。

 

タピオカはキャッサバ芋の澱粉を丸めて作った団子のようなもので、直径が10mmくらいの粒になっていて、タピオカドリンクは無味のタピオカの粒を甘いドリンクと一緒にストローで飲むことで、おいしく食することができます。1980年代より台湾で始まった食べ方ですので、ストローも台湾で作られていました。

 

1992年に最初のタピオカブームが起こりますが、2回目のブームは2008年です。そして3回目のブームが2019年に起こります。

 

2回目、3回目のタピオカブームの特徴は、テイクアウトによる食べ歩きと、2008年のiPhoneの日本発売によるスマホの広がりもブームに拍車をかけたと考えられます。つまり、片手で操作できるスマホと、片手で飲むことができるプラスチックカップとストロー、食べ歩きによって宣伝効果が生まれ、透明なプラスチックのカップは中の食材のタピオカの粒とドリンクやストローの色を映し出し写真映えがするようになります。

 

また、片手で何かをする行為が若い人におしゃれに映るのは昔から数多くあります。そういう意味で、ストローは食材を片手で飲むことのできるおしゃれな道具となり、若者に受け入れられる道具となりました。また、ストローを用い吸うことで食べることができるので、手に障がいを持つ人の道具にもなっています。

 

さてタピオカの1回目のブームのあと、タピオカドリンクをストローで飲む文化が定着してきました。しかし、ストローは台湾からの輸入に頼っていたわけです。それは日本でタピオカ用のストローを作れるメーカーが1社もなかったからです。そこでシバセ工業では台湾で作れて日本で作れないわけがないと考えて、タピオカ用の太いストローの開発に着手します。

 

直径10mmのタピオカをドリンクと一緒に飲むには、直径12mmが最適になります。ストローが細いとタピオカが詰まってしまうし、太過ぎるとドリンクばかり口に入ってしまいます。食材に合わせたストローのサイズが必要であり、直径の目標を最大13mmに定めました。1年くらいかけて金型や製造条件など試行錯誤の末、直径2mm~13mmくらいまで自由に作れるような設備が完成しました。

 

現在、飲料用ストローとしては直径サイズとして、3.5mm~15mmまで10段階の直径のストローを標準品として準備して、このなかから選ぶことができます。飲料用であれば食材に合わせての直径は1mm単位で十分です。長さや色や包装品など200種類以上の製品が取りそろえてあり、常に在庫していつでも出荷できるようになっています。

 

2019年のタピオカブームでは、急激にブームになったため注文に応じきれずストローが3カ月待ちの状態も発生しました。日本ではストローメーカーが少なくなって、タピオカ用の太いストローはシバセ工業しか作れないので、急な対応ではすべてシバセ工業に注文が入ります。タピオカストローは、海外のメーカーでも作れますが、納品まで時間がかかります。

 

多品種小ロットと同時に短納期というのが海外メーカーと競争するうえでの強みになります。もっとも、ブームの足は速く2020年に新型コロナの流行が始まると一気に終息してしまいました。もし輸入品に頼っていれば、売れ残って在庫で苦しんでいたかもしれません。

 

 

井上 善海

法政大学 教授

 

 

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