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遺産相続では相続人同士の協議(遺産分割協議)が必要になる場合がありますが、たとえば親と未成年の子供が相続人の場合、子の権利が侵害される恐れがあるので「特別代理人」を立てないと協議は進められません。みていきましょう。

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「特別代理人」は指定された手続きを代行

特別代理人とは、家庭裁判所で決められた手続きのために特別に選任される代理人のことです。未成年者の親権者や成年後見人とは異なり、決められた手続き以外の代理はできません。また、決められた手続きが終われば任務は終了します。

 

遺産相続では、遺産分割協議への参加、遺産分割協議書への署名・押印、相続登記や預金引き出しなどの相続手続きを代理して行います。

 

特別代理人は、相続の当事者でない成人であれば誰でもなることができます。弁護士などの資格は必要ありません。相続の内容や家庭の事情を知られるため、できれば親族に依頼するほうがよいでしょう。

 

ただし、特別代理人の候補として届け出た人が適任でない場合は、家庭裁判所によって弁護士や司法書士などの専門家が選任されます。

遺産相続で「特別代理人選任」が必要になるケース

遺産相続では、次のような場合に特別代理人を選任する必要があります。

 

  • 未成年者と親がともに相続人になるケース
  • 認知症の人と成年後見人がともに相続人になるケース

 

未成年者と親がともに相続人になるケース

未成年者とその親がともに相続人になる場合は、未成年者に特別代理人を選任する必要があります。通常、未成年者の代理人は親権者が務めますが、親と子が遺産を分け合う状況で親が代理人になると、親と子で利益が相反して子の権利が侵害される恐れがあるからです。

 

たとえば、父が死亡して母と未成年の子が相続人になる場合では、子に特別代理人を選任します(図の例1)。

 

両親がすでに死亡している場合など未成年後見人がいて、未成年者と利益が相反するときも特別代理人の選任が必要です。たとえば、祖母が死亡して未成年後見人である祖父と未成年の子が相続人になる場合では、子に特別代理人を立てる必要があります(図の例2)。

 

なお、1人の人が兄弟姉妹など2人以上の未成年者の特別代理人になることはできません。兄弟姉妹どうしで利益が相反するからです。未成年の相続人が複数いる場合は、その人数に応じて特別代理人を選任しなければなりません。

 

■相続人でなければ代理人になれる

 

未成年の相続人に特別代理人が必要になるのは、あくまでも親権者が同じ相続の相続人になっていて利益が相反する場合です。同じ相続の相続人になっていなければ親権者は代理人になることができ、特別代理人を立てる必要はありません。

 

たとえば、父がすでに死亡していて、未成年の子が父方の祖母の相続人になる場合は、特別代理人を選任する必要はありません(図の例3)。母は父方の祖母と血のつながりがないため相続人にはならず、母と子の利益は相反しないため、母は子供の代理人になることができます。

 

認知症の人と成年後見人がともに相続人になるケース

認知症などにより法定後見制度のもとで後見されている人(成年被後見人)と成年後見人がともに相続人になる場合は、成年被後見人に特別代理人を選任する必要があります。未成年者と親の場合と同じく、成年被後見人と成年後見人で利益が相反するからです。

 

ただし、成年後見人を監督する成年後見監督人がいれば、改めて特別代理人を立てる必要はありません。

 

 
次ページ特別代理人選任…実際にどう動けばいい?

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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