「認知症高齢者の増加」で変革を迫られる金融機関
ただし、預貯金のことであれ不動産のことであれ、本人の〝意思確認〞は慎重に行うべきです。なぜなら、財産をどうするかの決定権は、最終的に本人にあるからです。いくら家族であっても、本人の意思に反した行為は、法的に問題があります。
しかしながら、認知症高齢者の増加によって、肝心の本人の意思確認ができないという大きな壁が立ちはだかっているのです。
先程、高齢者の財産を狙う振込め詐欺について少し触れました。この犯罪を阻止するため、金融機関が高齢者の預貯金の引き出しや振込みに慎重になるのは仕方ないことではあります。
その一方で、金融機関の高齢者や認知症への対応については、見直すべき段階になっていると筆者はみています。というのも、これだけ高齢化が進み認知症や相続に関する案件が増えているにもかかわらず、スムーズに対応できる窓口が少ないからです。
まず、支店に認知症や相続案件に対応できる担当者があまりに少ないです。本人が認知症の場合の対応や、相続手続き全体の流れや、何から手をつけるべきかといったことを説明できるスタッフが果たしてどれだけいるのでしょうか。
もちろん専門職などではありませんので、事細かな解決方法まで提示することを求めているわけではありません。しかし、これだけニーズが増えている中にあっては、窓口に来た人、特に高齢者に対しては分かり易く丁寧に説明する責任があるのではないでしょうか。
確かに、手続きを相続センターなどに一本化した方が効率はいいです。しかし、高齢者がいきなりセンターに問い合わせをするでしょうか。やはり、まずは窓口を訪れる人が圧倒的多数だと思います。
課題に直面した高齢者は、ただでさえ不安や悩みを抱えています。そんななかで、けんもほろろに対応されてしまえば、その精神的ダメージは計り知れません。