※画像はイメージです/PIXTA

高齢化の進展により、相続人のなかに認知症になっている人がいるケースも珍しくありません。そこにはさまざまな問題が内包しています。相続人に認知症の人がいる場合の相続手続きについてみていきましょう。

成年後見人を立てないで相続する方法

これまで認知症の相続人に成年後見人を立てる方法をお伝えしました。しかし、成年後見人の選任には数ヵ月の期間がかかるだけでなく、親族以外の人が成年後見人になった場合は報酬を支払う必要があります。

 

遺産があまり多くない場合は、どうにかして成年後見人を立てずに相続したいというニーズもあります。この章では成年後見人を立てないで相続する方法をご紹介します。

 

遺言による相続

成年後見人を立てないで相続するには、被相続人となる人が生前に遺言書を書いておくという対策が考えられます。被相続人が亡くなってしまえば間に合いませんが、事前の対策としては有効です。

 

遺言書で遺産の分配方法を指定しておけば、相続人はそのとおりに遺産を受け取ることになり、遺産分割協議をする必要はありません。相続登記などの手続きでも遺言書を持参すれば受け付けてもらえます。

 

ただし、遺言書は法的に有効なものであることが前提であり、無効にならないように正しく書くことが重要です。

法定相続分での相続は難しい

遺言がない場合は、法定相続分で相続する方法も考えられます。法定相続分のとおりに遺産を分けるのであれば遺産分割協議は不要で、代理人を立てる必要もありません。

 

しかし、実際には必ずしも有効な方法ではありません。預金の相続手続きでは相続人の戸籍謄本や印鑑証明が必要であることが多く、認知症の相続人についてこれらの書類を取り寄せるときに代理人が必要になります。

 

不動産を法定相続分で相続する場合は、相続登記の手続きは相続人のうちの誰か1人が申請すればよいことになっています。

 

ただし、不動産は相続人全員の共有状態になります。のちに不動産を売却したり、担保に差し出したりする場合は相続人全員の合意が必要であり、その時に認知症の相続人に成年後見人を立てる必要があります。

成年後見人の選任手続きは早めに行ったほうがいい

ここまで、相続人に認知症の人がいるときの相続手続きについてお伝えしました。

 

遺言状がある場合や、認知症の相続人にすでにその相続に関わりがない成年後見人がいる場合には、そのまま相続手続きを進められるため特に問題はありません。

 

遺言状がなく、成年後見人がいない場合や成年後見人が同じ相続に関わる場合には新たに申し立てを行う必要があるため注意が必要です。特に相続税申告が必要な場合は10ヵ月という期限があり、その期限内に遺産分割を終えなければなりません。

 

成年後見人や特別代理人の選任申し立て自体に時間がかかってしまうとその後の申告期限までのスケジュールに影響が出てしまうため、司法書士や税理士といった専門家に相談しながら迅速に手続きを進めることをお勧めします。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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