遺言信託でトラブルが起きることも
遺言信託は、遺産相続で家族がもめることがないように遺言書を作成して確実に執行するためのサービスです。ただし、遺言信託がもとで家族がもめるケースもあります。
■遺言執行の手数料をめぐるトラブル
「遺言信託の手数料」でお伝えしたように、遺言信託ではさまざまな手数料がかかります。そのうち遺言執行の手数料については、相続人が支払うことになります。遺言を執行するということは、遺言者は死亡しているからです。
遺言執行の手数料は100万円を超えることもあり、その分相続する財産が少なくなります。手数料を誰がいくら負担するかをめぐってトラブルになることも考えられます。手数料の負担についても遺言で定めておくとよいでしょう。
■遺言内容をめぐるトラブル
相続人が遺言内容を知らされていなかったことでトラブルに発展することもあります。
遺言内容は遺言者の希望をもとに専門家のアドバイスを受けて作成されますが、その内容に相続人の全員が納得するとは限りません。遺言書を作成するときには、残される家族と遺言内容についてよく話し合っておくことが重要です。
遺言を作成したあとで遺言内容を変更することはできますが、5万円程度の手数料がかかります。最初に遺言書を書くまでに家族との話し合いは済ませておくほうがよいでしょう。
類似したサービスとの違い
この章では参考のため、遺言信託のもう一つの意味である「遺言による信託」と、遺言信託と類似したサービスである「遺言代用信託」と「民事信託」をご紹介します。
■遺言による信託
信託業者に財産を信託することを遺言で定めて、相続人や指定した人に長期にわたって安定的に財産を受け継がせることができます。相続人に判断能力がない場合や、浪費が心配な場合に有効な方法です。
■遺言代用信託
遺言代用信託では、被相続人が生前に財産を信託銀行に信託し、信託銀行から相続人に財産が払い出されます。財産を受け取る人は信託契約で定めるため、遺言書を作成する必要はありません。
遺言代用信託も信託銀行で取り扱っていて遺言信託と混同されがちですが、これらは異なるサービスです。
■民事信託
民事信託は被相続人の財産を管理する人を家族の中から選ぶことができる信託の形態で、「家族信託」と呼ばれることもあります。遺言では指定できない孫の代までの財産承継も指定できます。
信託銀行などに委託する場合に比べて費用がかからないことから、財産が多くない場合や家族内で財産管理を行いたい場合に利用されます。ただし、信託の形態としては新しいため、実務に精通している専門家が少ないのが現状です。
遺言信託がいいのか、他の類似サービスがいいのか…
ここまで、信託銀行が提供する遺言信託サービスについて詳しくお伝えしました。信託銀行の遺言信託を利用するのがふさわしい人としては、まとまった資産があって手続きを1か所で済ませたい人などがあげられます。
遺言信託を利用する場合は、契約内容とメリット、デメリットを理解したうえで契約することをおすすめします。また、遺言信託がトラブルを生まないように、契約内容や遺言の内容について家族とも話し合っておくとよいでしょう。
なお、遺言信託がいいのか、他の類似サービスがいいのか、その辺りから中立的な立場の意見をきいて相談したいという方は、まずは相続手続きの専門家である司法書士に相談することをお勧めします。
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】