中小企業は日本経済の根幹をなす存在です。雇用の7割、日本のGDPのおよそ半分を生み出すなど、その役割は極めて重要なのです。しかし今、人口減少、長引く不況、コロナ禍等により、中小企業は大変な苦境に立たされています。中小企業の弱体化は、日本そのものの弱体化であり、解決は喫緊の課題であるといえます。状況を詳しく読み解いていきます。

「日本経済の屋台骨」の中小企業だが、経営環境は過酷

中小企業は日本企業の99.7%を占める存在です。国内の雇用の約7割を抱え、日本のGDPの約5割を生み出しています。とくに地方では存在感が大きく、雇用の約8割、地方のGDPの約7割を担っています。

 

中小企業が成長していけば、働く人とその人たちの家族の生活が豊かになります。地域の雇用や税収が向上すると、国内全体の経済成長につながります。

 

ちなみに、中小企業は業種によって定義が異なります。製造業においては資本金3億円以下か常時使用の従業員数が300人以下の企業を指し、卸売業では資本金1億円以下か常時使用の従業員数100人以下の企業をいいます。また小売業では資本金5000万円以下か常時使用の従業員数50人以下の企業が、サービス業では資本金5000万円以下か常時使用の従業員数が100人以下の企業が中小企業です(図表1)。

 

中小企業庁「2021年版 中小企業白書」より作成
[図表1]中小企業・小規模企業者の定義 中小企業庁「2021年版 中小企業白書」より作成

 

中小企業は量と質の両面で日本経済の屋台骨を支えているといえますが、経営環境は決して恵まれているとはいえません。大企業と比べて経営が不安定になりやすく、コロナ禍のような大きな変化が起きたときに業績が急激に悪化したり、そのせいで倒産や廃業に追い込まれたりするリスクも抱えています。

 

その根本的な要因は、企業を維持するための資金と人材が足りていないことです。

中小企業の「約7割は赤字」…景気急変が致命傷に

資金は企業を成長させるための投資に必要です。手持ちの資金がない場合には、銀行から融資を受けたり投資家や投資機関から調達したりすることになります。しかし、中小企業の場合は大企業に比べて金融機関から融資を受けづらいのです。

 

銀行などの融資は、自己資本比率や営業利益の推移などを重視して行われるのが一般的です。自己資本比率は業種によって平均が異なりますが、製造業では中小企業の自己資本比率が25%前後であるのに対して、大企業は40%前後と大きな差が開いています。そのため、資金の調達に苦戦する中小企業が多いのです。

 

また、資金は不況になった際に企業が耐えるためにも必要ですが、不況を乗り越えられるだけの十分な資金を蓄えている企業のほとんどは、上場しているような大きくて力のある企業です。中小企業の約7割は赤字で、景気の急変が致命傷になるケースが少なくありません。コロナ禍では国の主導でさまざまな好条件の融資が行われていますが、「資金繰りと資金調達に関するアンケート調査」によると今後1年間に「資金調達が必要」と答えた事業者は約42%で、そのうちの半数以上が「資金調達の目途が立っていない」というデータもあります。

 

ベンチャーキャピタルなどから出資を受ける方法もありますが、「出資したい」と思ってもらうためには企業の成長が不可欠です。新しい技術やビジネスモデルがある企業ならよいのですが、業績が伸び悩んでいたり市場そのものが斜陽化しつつあったりする場合、出資してもらえる可能性は低くなります。

 

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