「異常気象がなければ安定収入」は本当か?
■ルールが厳格化され「認定取り消し」のリスク発生
過去に太陽光発電所を購入し、固定価格買取制度により売電収入を得ている人も、太陽光発電所の購入当時に曖昧であったルールが、新規に認定申請する人が提出すべき『事業計画策定ガイドライン』(資源エネルギー庁 ※1)に合致した形で、毎年細かく改訂される規定を遵守する必要が問われています。
たとえば、2018年7月23日付で資源エネルギー庁より配信された「定期報告に関するお知らせ(注意喚起)」では、FIT(固定価格買取)制度の認定を受けた事業については、法令上の認定基準として、再生可能エネルギー発電事業者が発電設備の設置に要した費用の報告(設置費用報告)及び認定発電設備の年間の運転に要した費用の報告(運転費用報告)等を経済産業大臣に対して行うことを求められています(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法施行規則第5条第1項第6号及び第7号)。
定期報告を行う時期については、
「設置費用報告:発電設備が運転開始した日から1ヵ月以内
運転費用報告:発電設備が運転開始した月の翌月末までに毎年1回
定期報告の提出は認定基準として義務付けられているため、2018年8月10日までに御提出いただけない場合には、経済産業大臣による指導の対象となるほか、認定が取消しの対象となる可能性があります。」
としており、資源エネルギー庁は発電事業者に対して発電事業が継続できなくなるような文書を発信しています。
※1 資源エネルギー庁『事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)』
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/legal/guideline_sun.pdf
■「事業計画変更のルール」はほとんど知られていない
太陽光発電事業を開始する(=FIT〔固定価格買取〕制度の認定を受ける)ためには事業計画を提出する必要がありますが、一度認定を受けた事業計画について内容に変更が生じた場合や、事業を譲渡する場合などは、変更内容ごとに細かく変更手続きが規定されています(※2)。
具体的には、変更対象の項目が以下のような場合に電子申請が必要になります。
●事業者名(事業譲渡・競売物件による事業者変更・社名変更、会社分割、合併・相続 etc.)
●法人番号
●法人の代表者(役職/氏名)
●事業者の住所
●発電設備の出力(売電価格が変わる可能性があります)
●発電設備の設置場所(地番の追加・削除、地番の分筆、合筆による変更 etc.)
●太陽光発電設備の設置形態(屋根設置と地上設置の別)
●太陽電池に係る事項(製造事業者名/種類/変換効率/型式番号/枚数/合計出力)
●保守点検責任者
●保守点検及び維持管理費用
●廃棄等費用(総額、算定方法、積立開始時期、積立終了時期、毎月積立金額 etc.)
●自家消費等計画 など
たとえば、相続を受けた方が変更手続きを怠ってしまうと、太陽光発電事業が継続できなくなるというケースが生じるということです。
事業者の住所変更についても、(法人の場合)履歴事項全部事項証明書【原本】や、(個人の場合)住民票の写し、住民票記載事項証明書【原本】が電子申請の添付書類として必要になります。
確かに、固定価格買取制度で買い取られる再生可能エネルギー電気の買い取りに要した費用は、電気の使用者から広く集められる再エネ賦課金によって賄われています(この事実も意外に知られていなかったりします)ので、資源エネルギー庁として太陽光発電事業者には厳格なルールに基づいた申請手続きを求めることは分かります。
ただ、事業計画の変更について細かく電子申請ルールが定められていることを、太陽光発電所を保有しているほとんどの方は認識していないというのが実情なのです。
※2 資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fit_2017/henkou_seirihyou.pdf