「心配をかけたくない」という思いの裏にあるのは…
■親密な関係を怖れてしまう心理
自分にとって「大切な人」にほど、話すべきことを話さない人がいます。
「なぜ、話さないのですか?」と質問すると、決まって次のように返ってきます。
「心配をかけたくなかった」
お気持ちはわかります、私だって大切な人に、ネガティブなことを伝えてムダに不安を煽るようなことはしたくありません。しかし、問題が大きくなるのは、いつだって話していないことが原因です。
「仲間に心配をかけたくない、嫌な気持ちにさせたくない。けど、自分の想いをわかってもらいたい」
ビジネスパーソンの多くは大なり小なりこのジレンマを抱えています。なぜ、大切な人に話すべきことを話さないのでしょう?
それは「心配をかけたくない」という思いの裏に、「一人でなんとかしなくてはいけない」という思考があるからです。さらに言えば、大切な人に話すべきことを話さない人は、問題を一人で抱え込むことが癖になっています。
このような癖を持つ人は、他者と親密な関係になることを怖れている人です。
親密な関係とは、「心と心がとても近くに感じられる関係」のことです。お互いの心の距離が近いので、相手の心がハッキリと見えます。当然、相手からも自分の心がすべて見られることになります。このとき自分の心の中に「見られたら嫌だな」という思いがあると、親密な関係を拒否してしまうのです。
その結果、自分にとって大切な人に、話すべきことを話さなくなります。正確に言えば、「話せない」と感じるのです。
親密な関係を拒否しているので、話すべきことが話せない、つまり対話が成立しません。よくて、当たり障りのないコミュニケーションをとるだけで、本当に大切な真実の情報が伝わりません。
経営者は会社全体に、各部署やチームの責任者はグループに最も大きな影響力を及ぼしています。そのため、責任者が親密な関係を怖れていると、組織内の人間関係がうまくいきません。チームワークを充分に発揮できなくなってしまいます。
部下育成やチームマネジメントの相談に乗っていると、「これは部下には言えない話なのですが」と話し始める人がいます。ご相談をじっくり聴いてみると「それを言わないから部下が不安を感じ、その不安が会社に対する不満になっている」と感じることがよくあります。
一人の優秀なビジネスパーソンから、リーダーシップを発揮する上司へと成長していくとき、大切になってくるのが「親密感」です。親密感があると、引っ張っていくのと同時に、「寄り添う」こともできるようになります。
「これは言えない」と思うことが多い組織は、風通しの悪い組織で空気が淀んでしまうのです。組織の風通しが悪いと、そこで働く人々からは活気が失われてしまいます。
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