【中期】
この段階では、側頭葉から頭頂葉へと変性が広がり、見当識障害も進みます。現在の時間に加え、今いる場所も分からなくなるため、本人の混乱がいっそう大きくなる時期でもあります。
一方、身体は元気なことが多く、それゆえ徘徊と呼ばれる一人歩きをしたり、暴れたりするBPSDが最も出やすい時期でもあります。
〈見当識障害(時間・場所)〉
●季節が分からなくなり、真冬に薄着したり、真夏にセーターを着たりする
●家の中と外の区別がつかなくなり、道路を裸足で歩いたりする
〈道具や手足が使えない(失行)〉
●食事が一人で食べられない
●歯みがきや洗顔などの日常動作ができなくなり、着替えにも介助が必要になる
〈言葉がうまく使えない(失語)〉
●意味の通らない言葉を使う
●言葉が出なくなる
〈徘徊〉
●家の外に出て目的もなく歩き回る
●外出先から帰れなくなる
【後期】
後期には、人物の見当識障害が進みます。徐々に、脳内の大脳皮質の機能が広い範囲で失われていきます。運動機能も障害されてパーキンソン様症状や歩行障害も見られます。画像診断では脳の萎縮が高度にみられます。
〈見当識障害(人物)〉
●長年連れ添った配偶者の顔が分からなくなる
●自分の子どもなど、身近な人が判別できなくなる
〈排尿、排便障害〉
●便や尿をもらしてしまう
●トイレ以外の場所で排泄をする
●排泄物が何か分からなくなり、便をいじってしまう
【終末期】
認知機能が高度に障害されて、言語によるコミュニケーションがほとんど取れず、寝たきりの状態になります。なお、後期から終末期にかけては、活動力の低下に伴い運動や嚥下、呼吸機能といった認知機能以外の機能も衰えやすくなり、種々の合併症のリスクが高くなります。
〈表情が非常に乏しくなる〉
●話しかけても反応しなくなる
●表情を動かさなくなる
〈摂食障害〉
●嚥下障害等が進み、介助があっても食べ物を受けつけなくなる
●食べ方自体が分からなくなる
〈寝たきりになる〉
●歩行や座位を保つことが困難になり、寝たきりになる
●寝たきりになることにより、症状がさらに進んでしまう
病期別の症状と受診医療機関、推奨されるリハビリの一覧を【図表】に示します。
病期が進むにつれ、記憶障害だけでなくBPSDの出現、運動機能の低下、内科的な病気の合併などが積み上がり、それらに応じたリハビリや治療が必要になってきます。これらもまた、患者の高齢化や余命の延伸によって、昔よりもその必要性は高まっているといえます。
認知症専門医だけでなく、かかりつけ医、精神科病院、リハビリ病院、救急病院等との連携を図ることが適切な治療にとって重要になってきます。
旭俊臣
旭神経内科リハビリテーション病院 院長
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