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認知症の治療は「早期発見」が何よりも重要だが…
アルツハイマー病と聞くと、「家族の顔が分からなくなる」「何もできなくなる」というイメージばかりが先行してしまいがちです。
しかし、アルツハイマー病になったからといって、突然そのような症状が現れるということはありません。ここが、医療関係者にとっての認知症と、一般の方にとっての認知症のイメージの違うところです。世間で広まっている認知症患者のイメージは、症状が相当に重度化したときのものであることがほとんどで、適切なケアをしていれば、それはある程度予防できます。
アルツハイマー型認知症の病期と経過
アルツハイマー型認知症は多くの場合、5~10年程度かけてゆっくりと進行します。私は初期、中期、後期、終末期の4つの病期としています。
医療の発展に伴い、認知症患者の高齢化ならびに罹患後の余命も延伸しており、終末期の期間も以前に比べ長くなっています。そのぶん、介護者に求められるケアの内容も、認知症全体の介護に占めるバリューも増えているのが昨今の流れといえるでしょう。
【初期】
アルツハイマー病の初期は、記憶障害が主な症状ですが、その程度はごく軽く、単なるもの忘れとの区別がなかなかつきません。そのため、長期間生活をともにしている家族など、ごく身近な人でなければ気づかないことも多々あります。
ただし、数カ月単位で振り返ったときに、記憶障害の頻度が徐々に高くなり、毎日のようにもの忘れによる何かのトラブルが起こるようになると、アルツハイマー病が疑われます。
また、本人には病識がないことが多いとはいえ、自分の認識と現実が噛み合わない状態をうすうす感じとっており、それがつもっていくとストレスとなって不安やうつ状態を最も引き起こしやすくなります。
初期症状は次のとおりです。
〈記憶障害〉
●数分前に言ったことと同じ内容を何度も尋ねたり、話しかけたりする
●日付や曜日など、年月日が分からなくなる
〈もの盗られ妄想〉
●通帳や財布、印鑑など、自分の大切なものが見つからなくなり、周りを疑う(疑いの目は家族など最も身近な介護者に向けられやすい)
〈うつ状態〉
●趣味や習い事に興味を示さなくなる
●一日中ぼーっとしている日が多くなる
〈取り繕い〉
●忘れていることを取り繕い、うまくつじつま合わせをしてその場を切り抜ける
例)「今日は何曜日ですか?」という質問に対し「定年退職したら曜日は関係ないから」
〈実行機能障害〉
●朝の身支度や料理の手順にまごつき、以前よりも時間がかかるようになる
●テレビのリモコンなど、頻繁に利用する電化製品の使い方が分からなくなる