腸内フローラが「個人の体質・健康状態」を決めるという衝撃【医師が解説】

マイクロバイオータと解毒機能について

腸内フローラが「個人の体質・健康状態」を決めるという衝撃【医師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

工業化学物質や環境汚染物質といった「ゼノバイオティクス(環境毒素)」は、“慢性疾患に繋がる炎症”を起こす大きな一因です。環境毒素を体内に蓄積させないためには、腸内環境を整えること(=腸活)、肝臓のデトックス機能を高めることが重要です。今回は腸内環境に関連する知識として、近年研究が進んでいる「マイクロバイオータ」について詳しく見ていきましょう。※本連載は、小西統合医療内科院長・小西康弘医師による書下ろしです。

ヒトの腸内細菌はゼノバイオティクスを代謝する

■ヒトが「食物繊維」を分解・吸収できるのはマイクロバイオータのおかげ

マイクロバイオータが、食事成分、環境汚染物質、医薬品などの形で摂取された多くのゼノバイオティクスの化学構造を変化させることは、すでに1950年代には確認されていました。

 

これらのゼノバイオティクスの種類は数万種類もあり、年々増加しています。マイクロバイオータと相互反応は実に多様で、大半のことはまだ分かっていません。生理的に重大な結果をもたらすにもかかわらず、ゼノバイオティクス代謝を媒介する特定の腸内細菌株、遺伝子、酵素については比較的わずかしか分かっていません。

 

マイクロバイオータにはさまざまな酵素を合成する設計図が存在します。その多くがヒト自身にはなく微生物だけが持つものです。ヒトとマイクロバイオータの代謝が組み合わさることで、ヒトだけでは合成されない代謝物や特有の作用を持つ酵素が生成され、ヒト体内での生体活性が大きく変化する可能性があります。

 

一番分かりやすい例としては、食物繊維の分解・吸収です。ヒトは食物繊維を分解する酵素を持っていませんが、食物繊維を分解する酵素はマイクロバイオータの一部の菌種が作ってくれます。そのおかげで私たちは食物繊維を分解し吸収することができるのです。

 

■太りやすい人、太りにくい人…「体質の差」にもマイクロバイオータが関与

さらに、臨床研究により、マイクロバイオータによる代謝反応には顕著な個人差があることが分かっています。

 

まだ完全には解明されていませんが、一般的にはファーミキューテスやバクテロイデスといった偏性嫌気性菌が優勢ですが、個人によって、マイクロバイオータの組成には大きなばらつきが見られ、それが個人の体質の差として現れます。

 

たとえば、その組成の違いによって、食事から吸収できるエネルギーの量が変わってきます。同じだけのカロリーを取っていても吸収率が変わることで、「太りやすい体質」や「太りにくい体質」ができるということです。

 

誰一人としてまったく同じマイクロバイオータを持っていません。マイクロバイオータが、私たちの「体質」を決めているのです。顔つきや指紋がすべての人で異なるように、マイクロバイオータの状態は一人ひとり異なり、それが各個人の体質や健康状態を決めているといっても過言ではありません。

 

これを、ゼノバイオティクスとの関係で見てみると、同じゼノバイオティクスでも、個人のマイクロバイオータの状態が異なれば反応が変わってくる可能性があるのです。

 

ある人にとっては、ある特定のゼノバイオティクスがマイクロバイオータでうまく解毒される場合もあれば、逆に、その人のマイクロバイオータの状態によってはかえって毒性を強める可能性もあるということです。具体的にどういうことかについては後で説明しましょう。

次ページメラミン混入粉ミルク事件で腎臓結石が起きたワケ
自己治癒力を高める医療 実践編

自己治癒力を高める医療 実践編

小西 康弘

創元社

病気や症状は突然現れるのではなく、それまでの過程に、自己治癒力を低下させるさまざまな原因が潜んでいます。だからこそ、対症療法ではなく根本原因にまで遡って治療を行うことが重要なのです。 本書では、全人的な治癒を…

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧