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日本は12回目の非常任理事国選出に向けて立候補
まず、国連安保理の構成について、確認しておこう。
安保理は、全部で15ヵ国からなる。そのうち、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の5ヵ国は、常任理事国で改選されない。残り10ヵ国は、それぞれ2年の任期で毎年半数が改選される、非常任理事国だ。
日本はこれまでに、合計で11期22年間に渡って、非常任理事国を務めてきた。これは、非常任理事国としては、他国をおさえて、最長の期間となっている。
そして、日本は、今年6月に予定されている非常任理事国選挙に立候補している。もし選出されれば、2023~24年の2年間が12回目の任期となり、最長期間を更新することとなる。
常任理事国は拒否権を持っている
つぎに、議決の方法についてみていこう。
安保理の議決は、全15ヵ国のうち9ヵ国以上が賛成した場合に議案が可決・成立となる仕組みだ。ただし、重要問題である実質事項の議決では、常任理事国のうち1ヵ国でも反対すると議案は成立しない。これは、常任理事国が持つ拒否権といわれる。
この拒否権があるために、これまでさまざまな議案が否決される事態が生じてきた。大国の利害の不一致が、安保理の機能不全を引き起こしてきたと指摘されるゆえんだ。
拒否権にはものすごいパワーがある、ということは直感的にもわかる。実際に、常任理事国は、他の理事国14ヵ国がすべて賛成している議案であっても、拒否権の発動により不成立にもっていける。
投票力を表示する、「シャープレイ=シュービック指数」
では、拒否権には、実際にどれくらいのパワーがあるのか。具体的に数字で表すとしたら、どうしたらよいだろうか。
ここで、よく使われるのが、会議での採決や投票で各投票者の投票力を表示する、「シャープレイ=シュービック指数」という指標だ。シャープレイ氏とシュービック氏は、アメリカの経済学者で、この2人が開発した指数であるために、このような名前で呼ばれている。
この指標を使うと、投票力を数値で表すことができる。これは、ゲーム理論の中で、協力ゲームと呼ばれるものの分析に出てくる。議決の安定性や、各投票者の投票力の分析などによく使われる。
シャープレイ=シュービック指数の考え方は意外と簡単
この指数の考え方は、それほど難しくない。投票者は全部で5人として、過半数で可決・成立となるような投票を例にとって、みていくことにしよう。
投票者は、ある議案に順番に賛成票を投じていくとする。まず、このような投票順が何通りあるか、計算してみる。これは、中学の数学で出てきた「場合の数」の順列だ。順列は、投票者数の階乗だけある。投票者が5人なら、5の階乗(5!)=5×4×3×2×1=120通りとなる。
つぎに、ある投票者が投票する前には成立しておらず、その投票者が投票したことによって成立する、という投票順がいくつあるかを数えてみる。5人の投票者が賛成票を投じていく場合は、3人目の人が賛成票を投じた段階で、過半数となって成立となる。各投票者が3人目の投票者となる投票順の数は、それぞれ24通りずつある。
そして、この2つの投票順の数で割り算をしてみる。投票者数が全部で5人、過半数によって可決、という投票では、24/120=0.2となって、どの投票者も5分の1ずつ投票力を持つということになる。このようにして、投票力が計算できるわけだ。
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