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拒否権が発動されても、他の14カ国の賛成で再可決・成立できるよう、議決方法を変更したら…
以上のように、拒否権のパワーは強すぎる。そこで、架空の話として、もし、ある常任理事国が拒否権を発動した場合でも、他の14ヵ国(他の常任理事国4ヵ国と非常任理事国10ヵ国)が賛成することによって、再可決して議案を成立できるよう、議決方法を変更したらどうなるだろうか。
上記と同様の計算をしてみよう。この場合は、常任理事国であるアメリカのパワーは、194,387,558,400/1,307,674,368,000となる。これは、0.14865という値になる。
他の常任理事国も同じパワーを持つから、常任理事国全体では、約0.74326(≒0.14865×5)。非常任理事国は、全部合わせて残りの0.25674(=1-0.74326)のパワーとなる。非常任理事国のうちの1ヵ国は、その10分の1で、0.025674となる[③]。
③拒否権が発動されても、他の14カ国の賛成で再可決・成立できるよう議決方法を変更した場合
このように議決方法を変更した場合の投票力を計算してみよう。
常任理事国のパワーについては、①の計算過程を少し変更する。
15番目に投票して議案が成立するような投票順は、1通り、87,178,291,200通り、1通り、の3つの数を掛け算して、87,178,291,200通り。という部分は、カウントしない。
その代わりに、アメリカが14番目に投票して議案が成立するような投票順として、①であげたほかに、15番目にアメリカ以外の常任理事国が投票するケースをカウントする。
これは、アメリカの前に投票する13ヵ国の投票順、13の階乗(13!)=6,227,020,800通りと、15番目に投票する常任理事国の選び方、4通りを掛け算して、24,908,083,200通りとなる。
①の計算結果をもとに、計算しなおすと、合計で194,387,558,400通りとなる。
(=256,657,766,400-87,178,291,200+24,908,083,200)
したがって、アメリカのパワーは、194,387,558,400/1,307,674,368,000となる。これは、0.14865という値になる。
ちなみに、非常任理事国のパワーを直接求める②の計算は、つぎのように変更となる。
ある非常任理事国が14番目に投票して議案が成立するような投票順として、15番目に常任理事国が投票するケースをカウントする。これは、この国の前に投票する13ヵ国の投票順、13の階乗(13!)=6,227,020,800通りと、15番目に投票する常任理事国の選び方、5通りを掛け算して、31,135,104,000通りとなる。
これと②であげたものを加えて、合計で33,573,657,600通りとなる。
(=2,438,553,600+31,135,104,000)
この国のパワーは、33,573,657,600/1,307,674,368,000となる。これは、0.025674という値になる。
常任理事国のパワー0.14865に対して、非常任理事国のパワーは0.025674となる。常任理事国は、非常任理事国の約6倍のパワーを持つようになる。まだ、約6倍もパワーの違いは残るが、現在の約105倍の違いに比べれば、常任理事国と非常任理事国の投票力の格差は、だいぶ縮まることとなる。
家族会議でも応用してみるとよいかも
さて、ここで、話を国連安保理から家族会議に大きく転換してみよう。
いま、「つぎの連休にはどこに旅行にいくか?」について、家族の間で白熱した話し合いが展開されているとする。もし、話し合いがまとまらなければ、これまでに出されたいくつかの案の中から、採決を行うことになる。
家族が公平に一票ずつ投票していって、多数決で決められれば、旅行先は決着するはずだ。だが、もしかしたら、家族のうち誰かが拒否権を持っているかもしれない。
そんな場合には、家族のそれぞれの投票力を計算してみるとよいように思われるが、いかがだろうか。
篠原 拓也
ニッセイ基礎研究所
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