入学早々「落ちこぼれる」可能性も…新・学習指導要領「驚愕の厳しさ」【塾講師が解説】

入学早々「落ちこぼれる」可能性も…新・学習指導要領「驚愕の厳しさ」【塾講師が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「学習指導要領」とは、小学校、中学校、高校の学校種別ごとに教科の目標や大まかな学習内容を示したものです。時代の変化に合わせて約10年ごとに改訂されてきましたが、2021年度に導入された中学校の新・学習指導要領はかつてないほどの大改訂で、急に成績が下がった生徒も続出する事態に…。高校の学習指導要領の改訂が迫る今、中学校で起こった変化から、学校教育の最新事情を見ていきましょう。

新・学習指導要領により「成績が落ちた中学生」続出

2021年7月、私の経営する塾に保護者からの電話の問い合わせが相次ぎました。7月下旬の数日間だけで20件近い電話があり、そのときは私もいったい何事かと驚きました。話を聞いて分かったのは、中学校で1学期が終了し、わが子の1学期の通知表を見て驚いた保護者が当塾に問い合わせをしてきた、ということです。

 

私は心のなかで(やっぱりそうなったか)と、ある意味で納得しました。2021年4月から中学校で新しい学習指導要領が導入され、通知表の評価も新しくなっていたからです。評価の内容とともに観点が変わり、急に成績が下がってしまった生徒も少なくなかったのです。急にそれまでと異なる評価の通知表を見せられ、保護者が慌てたのも無理のない話です。

 

2020年度までの中学校の通知表は、「関心・意欲・態度」→「思考・判断・表現」→「技能」「知識・理解」という4つの観点で評価されていましたが、注目すべきは、観点が表す内容とその順番です。

 

最初の「関心・意欲・態度」は、授業を真面目に受けている、宿題などの提出物もきちんと出している、といったことで評価されます。2つ目の「思考・判断・表現」は、課題について自分なりに思考、判断して表現をするという、プロセスの部分です。そのあとにある「技能」「知識・理解」は、目標とすることを達成できる、テスト等で点を取れるなど、目に見える結果の評価です。

 

意欲やプロセスを評価して最後に結果という順番ですから、少々乱暴な言い方をすれば、学校で言われたことを真面目にやっていれば、結果(学力の定着)が万全でなくてもある程度の評価を得られた、それが以前の評価システムといえます。

 

一方、2021年度からは、「知識・技能」→「思考・判断・表現」→「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点に変わり、以前とは評価の順序が逆になっています。さらに、言葉だけを見ると以前の観点と似ていますが、それぞれが表す内容はかなり異なっています。

 

まず「知識・技能」は小テストや定期テストなど、点数で測れる部分です。ここが学習の基礎となります。次の「思考・判断・表現」は、学習したことを使って自分で考え、自分の言葉で表現していく力です。そして「主体的に学習に取り組む態度」は、授業で学んだことだけでなく、興味をもったことを進んで主体的に調べたり考えたりする、といった態度を指しています。

 

つまり、新しい通知表では基礎学力の定着を大前提として、それを使いこなして物事を読み解く応用力や、さらには教科書に書かれていないことまで自分から進んで考えていく発展的な取り組みまでを学力ととらえ、より明確に評価しようとしています。

 

これにより、教師に指示されたことを従順にこなす、受け身な姿勢が身についた生徒たちは、以前よりも評価が下がるケースが多発したのかもしれません。

次ページ新・学習指導要領の変化:学力観

※本連載は、大坪智幸氏の著書『デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

デタラメ受験戦争 失われた「学びの本質」

大坪 智幸

幻冬舎メディアコンサルティング

知育と徳育の両面から指導すれば、子ども一人ひとりの生きる力を引き出せる。 「塾屋」が提言する学びの本質とは? 学習塾を経営し自ら教壇に立って指導をする著者は、現在の受験本位の教育は本当の意味で子どものために…

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