新・学習指導要領における「資質・能力の三つの柱」
今回、通知表が劇的に変わったのは、2021年度から中学校で新しい学習指導要領が全面導入になったからです(小学校は2020年度、高校は2022年度より)。
学習指導要領とは、小学校、中学校、高校の学校種別ごとに教科の目標や大まかな学習内容を示したものです。そこには国が目指す「未来を担う子どもたちに対し、こういう学力を育てたい」という教育指針や学力観が表れています。
学習指導要領は1958年に発出されて以来、時代の変化に合わせて約10年ごとに改訂されてきました。2017年に告示された最新の学習指導要領では、1997年の全面改訂に続き、戦後からずっと継承されてきた内容が大幅に見直されています。
新しい学習指導要領では、これからの時代に求められる「生きる力」を確実に育成することを目標としています。
昨今、私たちの社会はこれまでの世代が経験しなかったような激しい変化の波に晒されています。テクノロジーの進歩や急速なデジタル化はもとより、環境問題・エネルギー問題など、地球規模のグローバルな課題解決も待ったなしになっています。
これからの時代を生きる子どもたちは、まさに世界規模で異なる文化や価値観をもつ人々とコミュニケーションを取りつつ、「絶対的正解」のない課題に取り組んでいかなければなりません。その場、そのときに応じた「最適解」を見つけていく柔軟でたくましい思考力を育んでいくことが重要になります。
また国内に目を向けても、高齢化が顕著になる一方で人口減少が進み、わが国の社会や労働のあり方も今後ハイスピードで変化していきます。単純労働やデータ化できる仕事はどんどんAI(人工知能)に置き換えられていき、社会は「AIを使いこなす一部の人」と「AIに使われる多くの人」に二分されていく、という指摘もあります。そこで求められる「生きる力」とは何か、その力を養うためには何をどのように学ぶ必要があるのか、それを示したのが新・学習指導要領なのです。
そこでは「生きる力」を育むために、幼稚園、小学校から高校卒業までの教育課程全体で子どもたちへの育成を目指す資質・能力として、次の3点を挙げています。
【育成すべき「資質・能力の三つの柱」】
①「何を理解しているか、何ができるか」=生きて働く「知識・技能」の習得
②「理解していること・できることをどう使うか」=未知の状況にも対応できる「思考力・判断力・表現力等」の育成
③「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」=学びを人生や社会に活かそうとする「学びに向かう力・人間性等」の涵養
この新・学習指導要領の「資質・能力の三つの柱」が、そのまま学校の通知表の評価にも反映されているのです。