「塾なし」高校受験で家族の絆が強まった
塾なし受験を通して子どもは、社会で生きていく力を自然と身につけていく。
受験もひとつの社会経験と捉えると、過程で得られることは多いほうがすばらしい。知識の詰め込みだけでなく、本物の学力=生きる力がつくことが、塾なし受験のいいところです。
受験に限らず、子育てをしている最中、子どもの成長を感じられた瞬間は、本当にうれしいものです。受験生になり、塾で勉強に励むお子さんを見て、成長を感じている方もいらっしゃるでしょう。しかし、塾なし受験となると、成長を感じる回数や度合いは、その比ではない!と、経験から断言します。
息子の場合、これほど成長するとは、はっきりいって想定外でした。受験を終えたとき、息子の予想以上の成長ぶりに、私たち夫婦は感動しました。塾なし受験には、「子どもの成長」といううれしいおまけがついてきます。これは、塾なし受験を通して私たちが身をもって知ったことです。
もちろん、塾なし受験を遂行していく途中、これで本当に大丈夫なのだろうかと、私自身、自問自答をする日もありました。迷いが出る一番大きな理由は、「この選択が、私自身の未来につながっていくことではない」からです。
息子にとってこれは正しい選択なのだろうか、と悩んでしまうのです。自分のことであれば、自分で決め、責任を持ってやりきるだけです。たとえ失敗しようとも、自分で選んだ道。結果がどうあれ、受け止められます。もし、これが誰かに言われて選択したことだとしたら……、そうはいかないかもしれません。
親として、自分の未来ではない、かけがえのない我が子の未来のことだからこそ、迷い、不安になるのです。
そして、子どもたちも、私たち大人と同じなのです。彼らも、自分がした選択であれば、責任を持って頑張り通せる。どう転がっても、結果を受け止めるしかないでしょう。傷つくこともあるかもしれませんが、少なくとも、結果を人のせい(親のせい)にして逃げることなく、また進んでいける。これが彼らの人生にとっては大きな意味のあること、すなわち成長するということなのです。
幸いにして、中学受験をする小学生ではありません。高校受験は中学3年生。自分の進路、いきたい高校を自分で考えられる年齢になっています。
自分で選択・決断した目標に向かって、自分でプランや作戦を立て、日々努力して、結果を待つ。時に不安を感じながら、時に迷いながら、でも自分で選んだ道を、努力を重ねて一歩ずつ進んでいきます。
もちろん、その先に待っている結末は、誰にもわかりません。受験とはそういうもの。もしかすると、希望した目標に届かないかもしれません。絶対に大丈夫とは、誰も言い切れません。
それでも、結果だけではなく、この経験をしたことにこそ意味があって、これから続いていく子どもの人生において、大きな収穫となるのです。
想像してみてください。塾なし受験をした子どもの経験知は、塾通いの受験生と比べるとその差は歴然です。主体性、経験値、計画実行能力、分析力や思考力など、塾なしで受験した15歳の力は、「こうすれば合格できる」と指示されたことをやっている15歳に大きく勝ります。そして、これらの力こそが、本当の学ぶ力であり、生きていくために必要な能力なのです。
この能力を身につければ、子どもが絶対的に成長する!
こんなうれしいことはありません。
■メリットその③家族の絆が強まる
塾なし受験を経験して強く感じたもうひとつのメリットは、家族の絆が強まったこと、でした。
高校受験という目標に向かって家族で頑張った体験は、一生に数回あるかないかのとても貴重な体験になります。大きなプロジェクトをやり遂げた達成感を、家族みんなで共有できる機会は、人生で恐らくそう多くはないでしょう。息子の合格に向かって、1年以上にわたり親子で一緒に考え、話し合いながら過ごした日々、そして乗り越えたときの喜びは、私たち家族の大きな財産となりました。
子どもの受験を塾任せにしてしまうと、その財産を得る機会をなくしてしまいます。大学受験となれば難しいかもしれませんが、高校入試はやり方次第で、塾に頼らず自宅学習で乗り越えられる、希望をかなえられる子どもは、実はたくさんいるでしょう。
家族で受験を乗り越えた体験は、親にとっても子どもにとっても、そして兄弟姉妹にとっても、とても価値のある財産になる。そしてこの経験は、将来の親子・家族関係にもよい影響を及ぼすでしょう。
高校受験は、家族の絆を強めるチャンス!なのです。
塚松美穂
ライター・教育アドバイザー
学習支援コーディネーター