休廃業・解散する中小企業は過去最多の理由
課題②:後継者不在
下図は、後継者不在の企業の割合を示したグラフです。これによると、17年(66・5%)のピークより減ったものの、依然として事業承継の相手がいない企業が多いとわかります。
一昔前なら、自営業や中小企業は親族内承継(世襲)が一般的でした。ところが戦後の日本は核家族化が進み、後継者が家族にいない、子どもに自由な職業選択を勧める親が増えてきました。経営が芳しくないなら、なおさらです。こういった家庭の事情もあり、事業承継は困難になりつつあります。
■業績が堅調でも休廃業・解散する中小企業は過去最多
経営者の高齢化や後継者不在という2つの課題は、中小企業の存続にどういった影響を与えているのでしょうか。東京商工リサーチの「2020年『休廃業・解散企業﹄動向調査」によると、2015年までは年間3万件台で推移してきた休廃業・解散企業は16年以降に4万件台に増え、20年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、調査開始以降最多の5万件弱となりました。
気になるのは、休廃業・解散企業と経営者の平均年齢の関係です。両者は相関関係にあり、後継者不在の高齢経営者が断腸の思いで会社を畳んだことが推測できます。ここからも、休廃業・解散件数の増加の背景には、経営者の高齢化が関係していることは明白です。
休廃業・解散企業の95%以上は、従業員20名以下の小規模な企業であることもわかっています。親族に後継者がいないとしても、社内に有望な人材がいればそこから選ぶこともできるでしょう。そうしないで休廃業・解散を選ぶのは、社内にも候補がいないことを意味します。
従業員が少ない中小企業の場合、経営者だけではなく彼らも高齢者であることが想像できます。存続よりも自社の歴史に幕を下ろすことに総意が得られたのではないでしょうか。一方、18年から20年にかけて、利益率が5%以上の企業は4分の1ほどあり、業績不振が休廃業・解散の理由ではないこともわかっています。社会資源の観点から言えば、これは非常にもったいないことです。
瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長