【関連記事】銀座の天ぷら職人が、跡取り息子に「何も教えない」深い理由
平均引退年齢70歳超の経営者が245万人
今後日本に訪れる「大廃業時代」を回避すべく、事業承継の在り方や具体的な手法を解説します。
最後まで目を通すことで、親族に会社を引き継ぐ親族内承継から第三者に会社を譲る第三者承継に至るまで、事業承継に関する幅広い知識が身に付くようになっています。
本連載の最大の特徴は、金融機関の事業承継支援に着目していることです。近年、金融機関は事業承継の支援に力を入れており、オーナー経営者が事業承継の相談をするのに最適なパートナーとなりえます。また、新たに普及しつつある「M&Aプラットフォーム」についても紹介していますので、基礎から最新の情報まで読者の方の理解が深まることを願っています。
■中小企業が承継されなければ22兆円のGDPが失われる?
最初の問題提起は、日本経済に襲い掛かろうとしている危機についてです。私も試算を見て驚きましたが、経営者の引退を控えた中小企業をそのまま放置しておくと、2025年にはその多くが後継者不在で廃業し、約22兆円のGDPを失う恐れがあるといいます。大企業が姿を消すならいざ知らず、なぜ中小企業の廃業がこれだけのインパクトをもたらすのでしょうか。
なぜなら、日本経済を支えているのは全国各地の中小企業だからです。その数は、国内にある企業約421万社のうち、99.7%を占める約419万社になっており、国内で働く人々の7割近くは中小企業に勤めています。日本の産業構造として圧倒的多数を占めるのは大手ではなく、中小企業なのです。
ところがいま、中小企業は大きな転機を迎えていて、それが経営者の高齢化です。その大半が60代半ばで、2025年までに平均引退年齢の70歳を迎える経営者が245万人にものぼります。
さらに問題なのは、そのうちの半数の約127万社で、後継者が不在だという点です。すなわち、この状況を放置すると経営は黒字であっても、高齢化を理由に廃業を選ばざるを得ない経営者がそれだけいるのです。
結果、会社の売上は消え従業員の雇用はなくなり、取引先の経営にも悪影響が及び、22兆円の経済損失を招くといいます。