日本国債の信用度は「非常に高い」
日本経済についての話題のなかで、よく日本は国の借金が膨大で、国債のデフォルト懸念があるなどといわれることがありますが、とんでもない話です。
もし日本国債の信用が落ちているのであれば、国債の市場価格はもっと落ちているでしょうし、金利も高くなっているはずです。しかし、実際には日本の国債は世界でもまれに見る低金利で発行されて、なおかつすぐに売れていってしまいます。ということは、日本国債の信用度は非常に高いのです。
2014年4月現在、日本の30年国債の金利は1.7%しかありません。アメリカの30年国債だって3.6%の金利がついているなかで、異常なほどの低利で買い手がついています。
多数のプレイヤーがオープンなかたちで参加している市場の反応は正直です。わずかでもリスクが高まればあっというまに投げ売りが開始されますし、メリットのある投資先には人が群がって価格が急騰します。それを考えると、日本円や日本国債の信用度はぴか一といえるでしょう。
ちなみに、ここでいう日本円や日本国債の信用度とは、必ずしも日本政府に国際的なリーダーシップがあることを意味するわけではありません。逆に、日本は、下手に国際紛争に首を突っ込まず、国内でも内乱やテロの起きる可能性が低いと見られているからこそ、経済的に安定していると判断され、通貨や債券の信用が高いのです。
そのわりには日本国債の格付けが低いなどといわれます。確かにムーディーズやS&P(スタンダード&プアーズ)などといった有名機関の信用格付けにおける日本国債のランクは、中国や韓国と並んで10位前後であり、抜群に高いとはいえません。なぜ、そのようなことになっているのでしょうか。
「CDS契約料」の安さこそが日本国債が安全だという証
そもそも、格付け会社自体の信用度に疑問符がついています。
2011年にS&Pがアメリカ国債を格下げしたときには、アメリカの財務省によって約2兆ドルもの計算ミスが指摘されました。粉飾決算をしていたエンロンやワールドコムに高い格付けをしていた件では、アメリカ議会で審議会まで開かれました。
サブプライム関連ローンのリスクも見抜けず、長いこと最上級の格付けを与えていました。それをある日、突然、投資不適格のレベルにまで格下げしたことで市場が混乱したことがリーマン・ショックの発端です。格付け会社も罪深いですが、無批判に格付け会社を信用する投資家にも責任の一端はあるでしょう。
格付け以外に目を向ければ、市場が日本国債を安全だと見なしている指標があります。それはCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の契約料です。
現在の金融市場には、それを買う人と売る人がいる限り、ありとあらゆる金融商品が登場しています。CDSとは債券に関する一種の保険商品です。ある人が債券を購入したとき、その債券がデフォルトして紙屑になってしまうのを防ぎたいと思えば、オプションでCDSをつけることができます。
このCDSを契約すると、債券がデフォルトしても、CDSの売り手から利息や元本の返済を受けられるのです。CDSは買い手からいえば保険ですが、売り手からすれば、その債券がデフォルトしないほうに賭けているわけですから、かなり投機性の高い商品ともいえます。
このCDSの契約料は、それぞれの債券の破綻可能性によって大きく異なります。ギリシャの国債などは国債価格の90%近くを払わなければCDSの契約ができないそうですが、日本国債の契約料は国債価格の1.4%程度でしかありません。
この価格はフランス国債の契約料(2%)よりも低く、ドイツ国債の契約料(1%)よりも高い程度で、ごく低いものといえましょう。言い換えれば、それくらい日本国債は安全な資産だと市場から見なされているわけです。