先のみえないこの時代……老後のことを考え「まずは貯蓄」と考えている方も少なくありません。さらに、金融庁が試算した「老後2,000万円問題」の報道を受けて、老後資金への不安がますます高まりました。そのようななか、数々のシニアの資産を預かってきたのぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏は、この状況を冷めた目でみているといいます。高齢者の「貯金信仰」と、岡氏が危惧する「日本経済崩壊の危機」にはどのような関係があるのか、みていきましょう。

「自分の老後に必要な資金」の算出に大切なこと

将来に対する不安が大きい以上、老後に必要な資金を考えてしまうのも無理はないでしょう。しかしながら、老後に必要な資金の大前提として〝老後に必要な健康な心身〞について見つめ直すことが先決です。

 

そして、心身の健康を考えるとともに、人生の目標を確認しましょう。老後にやりたいことや夢について、目を向けることを忘れてはいけません。

 

例えば、海外旅行をたくさんしたい、孫がスポーツ選手として活躍できるよう応援したい、という目標があったとします。だとすれば、老後の資産は否が応でも多く残しておく必要があります。

 

そうではなく、カルチャーセンターで仲間と趣味を楽しむだけで十分ということであれば、大きな資金を用意する必要性は低くなります。

 

老後に自分が何をしたいか何をしたくないか、まずはそのことを明確にすべきです。それが、老後に必要な資金を考える出発点となります。

いざという時に契約不能…「まずは貯蓄」がネックに

よくシニア層の依頼者と話していると、〝もう歳だから〞と言って自分の老後の計画についてあまり考えようとしない方に出会います。確かに人間は歳を重ねていきますが、自分の人生の中で今が一番若いということを思い出してほしいと思っています。

 

老後に必要な資産については、日本人を一括りにできるものではありません。世代によっても変わります。

 

日本人は貯蓄を好む国民だと述べましたが、すべての世代が貯蓄に専念できているわけではありません。現役世代であれば、住宅ローンや教育費の支出がかさむため、思ったより貯蓄に回せていないなど様々な事情があります。

 

実際のところ、日本人の家計金融資産の60%以上は、60歳以上の世代が保有しているとされています。金融資産を多く持っているにもかかわらず、現状を維持しようとしたり、あるいは、さらに貯蓄へ回そうとする傾向があるのです。

 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

5年後には「65歳以上の5人に一人が認知症を発症する」といわれている昨今の超高齢社会。認知症は介護などの生活面だけではなく、資産運用や契約など財産面にも大きな影響を与えます。 多くの認知症患者の成年後後見人として…

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