先のみえないこの時代……老後のことを考え「まずは貯蓄」と考えている方も少なくありません。さらに、金融庁が試算した「老後2,000万円問題」の報道を受けて、老後資金への不安がますます高まりました。そのようななか、数々のシニアの資産を預かってきたのぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏は、この状況を冷めた目でみているといいます。高齢者の「貯金信仰」と、岡氏が危惧する「日本経済崩壊の危機」にはどのような関係があるのか、みていきましょう。

60歳以上の「まずは貯蓄へ」が招く最悪の事態

そして今、この世代の「まずは貯蓄へ」という習慣が思わぬネックになっています。本人が認知症となり、〝いざという時に、動かせない〞ケースが続出しているのです。

 

自分や家族のために貯金を使おうと思っても、認知症が進行してしまうと口座凍結や契約不能により金融資産に手がつけられない状態です。

 

何のために蓄えてきたのか分からない、そんな事態が起こっているのです。このことは、本来、市場に出回り経済を動かすはずだった資産が止まっていることを意味します。

 

日本の現状は言わば、血液(資金・おカネ)の体内循環(日本経済)に支障をきたしているのです。貯蓄が日本経済に還元されないため、市場に資金が流れないのです。

 

もし、政府が本気で内需拡大を考えるのであれば、この血液が上手く流れる政策を取るべきです。老後にいくら必要などといった議論は、メディアを喜ばせ国民の将来への不安をますます煽るだけです。

 

どうすれば高齢者の資産を円滑に動かすことができるのか、真剣に考えなければなりません。認知症社会と経済政策とは、まさに表裏一体なのです。

 

 

岡 信太郎

司法書士のぞみ総合事務所

代表司法書士

 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

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