(※写真はイメージです/PIXTA)

社外人材を後継者として招いた場合、オーナーと後継者との人間関係を築くまでは考えがすれ違ったり、意見が衝突したりすることもあるでしょう。実際に「赤の他人の会社」を継ぎ、今では後継者の育成講座などを行っているという筆者は、「人材育成は子育てと同じ」と語ります。親のほうに余裕がないとイライラ、ガミガミ言ってしまいますが、親が細かく口出ししないほうが子どもは本人なりのやり方や要領を掴んで、早く上手にできるようになるのです。第三者承継における候補者育成のポイントを見ていきましょう。

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後継者とオーナーの「すれ違い」は珍しくないが…

よくある事業承継のトラブルとして、大学で経営を学んできた後継者と叩き上げで実績を出してきたオーナーとで経営に対する考え方が異なり、意見がぶつかり合うというのがあります。

 

後継者は「経営は感覚でするものではない」と考え、オーナーは「理屈で経営ができるか」と考えるため話が交わらないというものです。

 

経営を学んできた後継者は理論的に戦略や戦術を立てようとしますが、オーナーにはそれが面白くありません。仕事は現場で動いているのだから、机上で数字やデータを組み立てても意味がないと感じてしまうからです。これは数々の現場をこなしてきた経営者ならではの感覚です。

 

しかし、後継者に対する遠慮もあって面と向かっては言えないので「できるもんならやってみろ」と思って見ています。失敗したときは「ほらみろ。俺の言った通りだっただろう」となりがちです。

 

一方、後継者のほうは「経験や勘で経営ができたら苦労しない」という考えや大学で専門に経営学を勉強してきた自負もあるので、理屈を大切にします。「先代に試されている」という思いから、失敗を回避するためにさらに念入りに理論を組み立てようとするかもしれません。

 

頭の中で戦略を立ててから動くことになるので、現場判断で条件反射的に動くよりも当然動き出しが遅くなります。これがまた、オーナーには「まどろっこしい」「鈍い」と感じられてしまいます。

 

オーナーが親切心から「こうしたら?」「こっちのほうが良いと思うよ」と提案やアドバイスをしても、「適当なことを言わないで」「考える時間くらいくれよ」と受け入れることができません。

「すれ違い」における最大の問題点

こうしたすれ違いの一番の問題は、両者とも自分のやり方が正しくて(優れていて)、相手のやり方が間違っている(劣っている)と思い込んでいることです。

 

この二人のやり方を比較してみれば、どちらが正解でどちらが間違いとは言えないはずです。オーナーは自分のやり方で結果を出してきたという、何より強い実績があります。しかし、自己流のやり方で失敗してきたことも過去には多かったはずです。

 

失敗した事例の中には、もっと理論的に戦略を立てて動いていたら成功できたものがあったかもしれません。あるいは成功したものの中にも戦略をプラスすることで、もっと大きな成果が出せる余地があったかもしれません。

 

そのように考えると経営には「経験や勘」の部分と「理論や戦略」の部分とが両方必要で、この2つがバランスよく含まれていることが重要だという見方ができます。

 

つまり、事業承継ではお互いのやり方を否定するのではなく、お互いを認め合うことが大事になってきます。そして、後継者に足りない経験や勘といった「経営のコツ」の部分をオーナーが教えて補ってあげれば、経営者としての成長がぐっと早まります。

 

もし、後継者が新しい事業展開をやってみたいと言ったときも、できるだけ応援することが大切です。

後継者のやり方を否定せず、「一歩引く」ことが重要

そもそも、後継者には先代の真似ではなく、自分の力を試したいという思いがあります。

 

だからこそ、他人の会社を継ぐ決意をしたに違いないのです。そのため、後継者が新しい事業を立ち上げてみたいと言いだすケースは多々あります。

 

そういうとき、私は後継者との面談で、先代への伝え方を工夫するようにアドバイスしています。いきなり後継者が「新規事業をやります」と伝えては、先代を不安にさせてしまうからです。

 

例えば、後継者は先代へ「今の経営状態だと先行きが不安なので、もう一本、事業の柱があったほうが安心だと考えました。こういう新規事業をやってみたいのですが応援してもらえますか」と伝えるようにします。すると、先代も「新規事業がうまく行かなかった場合、本業への影響が心配だから、別会社を作って挑戦してみなさい」などと冷静なアドバイスができるのです。

 

人間関係がまだ十分にできていない社外人材が後継者となる場合、オーナー側が一歩引くというのが重要です。

 

 

宮部 康弘

株式会社南星 代表取締役社長

 

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