「借金が多い会社は、後継者が見つからない」は誤解【第4の事業承継スキーム】 (※写真はイメージです/PIXTA)

親族内承継も、社内承継も、M&Aもできない…そんな会社でも、廃業以外の「第4の選択肢」があります。これは第三者承継の1種ではありますが、少数の普通株を後継者に譲渡して、残りは無議決権株式として自オーナーが保有するというスキームで、従来の事業承継のデメリットを一掃できる理想的な手法です。ここでは、第4の事業承継を検討するために知っておきたい「後継者探し」のポイントを見ていきましょう。自らも第4の事業承継で「他人の赤字会社」を継ぎ、今では後継者を求める企業と後継者になりたい人をつなぐ取り組みを行っている宮部康弘氏が解説します。

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「借金ナシで黒字経営じゃないと承継できない」は誤解

■借入金を減らすより「いつでも事業承継できる準備」を進めるべき

後継者を探す際に、会社に借金があることを引け目に感じてしまうことがあると思います。借入金があると後継者になってもらえないのではないか、条件が悪く映ってしまうのではないかという心配はよくわかります。

 

商工会議所やM&A仲介業者がやっている事業承継相談に行くと、「今の業績では難しいですね」「もう少し借入金を減らさないと相手が嫌がります」というようなアドバイスをされることが多いため、「借入金=あってはダメなもの」と思ってしまうのですが、それはM&Aをする企業向けのアドバイスです。M&Aでは買い手にとって見栄えのよい会社にする必要があるのでどうしても借入金は少なく、経営は黒字であることを求められてしまいます。

 

しかし、私が事業としてやっているマッチングでは、これまでオーナーと後継者の縁結びをしてきた経験上、赤字がハンデになった例はありません。LEADERSプロジェクトで育成する後継者候補たちは、業績の良さだけに魅力を感じる人たちではないからです。

 

事業そのものに魅力を感じたら継ぎたいという人たちなので、その会社の「ありのままの姿」を見たいと考えています。

 

もちろん杜撰な経営をしてきた会社はパートナー企業になってもらえませんが、真面目に事業をやって来た結果、必要があってできてしまった借入金については一切恥じることはありません。どこの会社も借金くらいあります。

 

オーナーの個人資産と会社の資産が混在しているとか名目だけの役員がいるなどは事前に整理が必要ですが、財務内容がきれいなら問題ありません。

 

業績の改善は後継者が手腕を振るってくれますから「黒字化してから承継する」というような無理な目標は立てなくて大丈夫です。むしろ、「借入金は社長として闘ってきた勲章だ」くらいの堂々とした気持ちでいてもらって結構です。

 

借入金をどうにかしようと労力を割くよりは、効率よく事業承継が進められるように「引き継ぐべきもの」をきちんと整理して、いつでも渡せる準備をしておくことのほうがはるかに大事です。

譲渡前に「分散株式はなるべく回収する」のがマナー

複数の株主に株式が分散している場合はなるべく回収しておくのがマナーです。後々のリスクを予防するためです。

 

事業承継で種類株を作ったり後継者に株を譲渡したりする際に、自社株を所有している者は誰かを把握する必要があります。業歴の長い会社になると、少数の株式を様々な者が持っていることが経営のリスクの種になることがあります。

 

例えば後継者が分散株を回収したいとなったとき、誰が株主かが分からないと困ります。

 

1990年以前は会社設立時に7名の発起人が必要だったため、名義だけ借りて株主になっている場合があります。また1990年初期頃はオーナー家の相続対策として、株式を親族以外の他者に安価で渡すという方法が取られることがよくありました。あるいは過去に上場を目指して他者の資本参加を募り頓挫したケースで、資本の払い戻しなどが行われないままたくさんの株主がいる場合があります。

 

このような分散株式は時間の経過とともに株主が亡くなり、相続でその子や兄弟、孫などにさらに分散している可能性があり、株主名簿にある人物と実際の株を持っている人が異なることが生じてきます。

 

分散株式の所有者がオーナーの親族や知り合いなら所在を辿ることもできますが、第三者である後継者では非常に難しくなります。

 

また、分散株式を持っている株主が「私は先代を応援したくて株主になった。経営者が代わるなら株を買い取ってほしい」とか「親がお宅の株主で株を相続したけど、要らないから買い取って」など言い出したときも困ります。

 

会社に買い取るだけの資金的余裕があればいいですが、なかった場合ピンチに陥ります。

 

融資が受けられるかどうか分かりませんし、融資してもらえたとしても経営を圧迫します。

 

分散株式の管理のコストもかかります。たとえ1株しか持っていない株主でも会社は株主名簿上で管理をし、議決権ありなら株主総会の招集通知を出すなどの対応をすることになります。

 

いずれにしても分散株式が多いことはリスクにはなり得てもプラスに働くことはまずありません。後継者に株を譲渡する前に、できるだけ回収して名簿をきれいにしておくことが大切です。

 

 

宮部 康弘

株式会社南星 代表取締役社長

 

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株式会社南星 代表取締役社長

九州東海大学機械工学科卒業後、住宅会社を経て保険業へ転職、現在はソニックジャパンに勤務。営業一筋25年。

保険営業時代、2017年12月26日に当時保険のお客さまであった社長から「会社を継いでほしい」とメールがあり人生が一変する。

後継者を求めている企業と後継者になりたい人たちの懸け橋を創る新規事業“LEADERSプロジェクト”を立ち上げる。

2018年11月、株式会社南星の代表取締役に就任。

著者紹介

連載オーナー社長の最強引退術~親族内承継、社内承継、M&Aに次ぐ「第4の事業承継」

※本連載は、宮部康弘氏の著書『オーナー社長の最強引退術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

廃業寸前の会社を打ち出の小槌に変える オーナー社長の最強引退術

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宮部 康弘

幻冬舎メディアコンサルティング

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