(※写真はイメージです/PIXTA)

2020年5月に金融商品取引法が改正されて誕生した「デジタル証券(ST:セキュリティトークン)」は、ブロックチェーンで管理されるデジタル金融商品のことを指します。デジタル証券の市場規模はまだ小さいものの、尋常ではないスピードで成長しはじめていると、PayPay証券の創業メンバーで現在はHash DasH株式会社取締役の三好美佐子氏はいいます。「デジタル証券」の可能性と投資環境の未来について、三好氏が解説します。

日本国内のST(セキュリティトークン)市場

日本のデジタル証券を取り巻く環境については、試験的な商品として不動産STを発売しながら、売買ができるプラットフォームを構築しているところです。

 

このビジネスへは、メガバンク(三菱UFJや三井住友など)、オンライン証券のトップSBI、対面型証券会社(野村、大和など)、スタートアップ(Hash DasH)など、金融機関総動員で取り組んでおり、しかるべき時期がくれば、一気に大きな前進がみられるのではないかと思います。

 

金融業界が実現を目指すのは、ST商品を「一般投資家から一般投資家へ」CtoC取引が自由にできる世界です。これには、PTS(私設取引システム)のライセンスが必要か否かの議論をしており、株式取引のようなオークション方式を採用するか、あくまでも安定的な価格を保ちながら新しい取引のカタチを作るのかは、金融機関に熟考を課せられている段階です。

STプラットフォーム構築後の世界

実物不動産に投資する場合、下記のようなステップを踏む必要があります。

 

①予算を決める
②物件を探す
③見に行く
④資金計画を立てる
⑤購入申込み(申込証拠金を支払い)
⑥重要事項の説明を聴く
⑦売買契約を結ぶ(手付金)
⑧住宅ローン契約
⑨引き渡し
⑩所有権移転登記

 

そして晴れてオーナーになり、日頃のメンテナンスへ。ここまで10段階ものステップがあり、大変煩雑です。

 

不動産小口化商品を利用することで、投資家は①、②、⑦を行えばよく、他のステップはすべてプロフェッショナルである事業者が行ってくれることになります。

 

⑥の説明も実物不動産の場合は宅地建物取引士から対面で説明を聴くことになりますが、不動産小口化商品ではオンライン等で提供される書類を自身のタイミングで読むことができます。

 

さらに、売却の段でも、

 

①保有物件の査定

②不動産会社と媒介契約を結ぶ

③売買契約を結ぶ

④引き渡しの準備(ローンの返済、抵当権抹消など)

⑤決済、所有権移転登記


と、売主も実施しなければならない手続きが多くあります。そして、不動産小口化商品でも、自由に売却できるプラットフォームはまだありません。

 

不動産売買はこのように手続きの複雑さと流通しにくい難点がありますが、ST不動産の取引プラットフォームが整備された暁には、オンライン証券で株式を売買するように簡単に不動産物件(正確には、不動産物件を裏付けとした権利)を入手し、簡単に手放すことが可能となります。

 

想像してみてください。―魅力的な不動産を見つけたとき、購入しようと心に決めたその日に送金して、スマートフォンやパソコンで書類をいくつか確認し、口数を入力してボタンを押すだけで、家賃収入を得る権利があなたのもの。実質的な不動産オーナーに、そして売るときも、スマートフォン、パソコンを開き、口数を入力してボタンを押すだけで、数日後には売却代金を受け取ることができる……そんな世界を。

 

そうなってくると不動産投資がグッと身近になり、安定収入を期待して不動産投資を考える方が増えるでしょう。いまは眠っている日本中の不動産が動き始めるかもしれません。

 

国土交通省によると、日本の不動産市場は約2,600兆円、そのうち証券化された不動産はわずか33兆円。どこまで、日本の不動産が元気になるか、楽しみです。

 

また、ブロックチェーンのグローバル性に目を向けると、東海東京証券が販売した不動産STは日本国内の不動産物件を外国の取引所で売買することができますが、逆に、海の向こうの魅力的な不動産物件のSTを日本人が買うことができるようになるかもしれません。

 

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