不動産投資のいいとこ取り…不動産デジタル証券とは
ブロックチェーン技術を活用した新時代の投資商品「デジタル証券」。日本では2020年5月に誕生して以降、アンテナの高い一部の投資家には注目されているものの、市場規模はまだまだ拡大の途中です。ただ、最近では群馬県草津の温泉宿が証券化されるなど、金融商品としてこれまでにない取り組みが話題となっています。
そもそも「デジタル証券」は、①財産的な裏付けがある、②利益の分配を行う、③その持ち分はブロックチェーンを使って電子的に発行管理されることの3点を満たしていることと定義されています。それは、デジタル証券がなにか特別なものというよりも、従来からある有価証券の完全なペーパーレス化であり、「インフラ面での進歩版」といえるでしょう。
なお、日本のデジタル証券は「不動産小口化商品」が主役で、現在までに6本、約90億円が発行されました。
では、このような「デジタル×不動産」は、これまでの実物不動産投資とどのような違いがあるのか、またこの仕組みは投資家にどのような恩恵をもたらしてくれるのでしょうか。
「不動産×デジタル」が投資家にもたらす恩恵
家賃を収入源とする不動産投資は、長期的に安定的なキャッシュフローをもたらしてくれる心強いパートナーでしょう。しかしながら、現物の不動産投資には大きく3つのハードルがあります。
・物件を選ぶスキル:立地条件や物件の質などテナント退去リスクを下げるために必要です。
・手間や時間:申込金の支払い、宅地建物取引士からの対面説明、契約書への捺印、銀行ローンの契約、所有権移転登記など、煩雑な手続きが続きます。
・金額の硬直性:物件金額に拘束され、弾力的な資金の増減ができません。
一方、不動産デジタル証券では、不動産の専門家が選んだ物件を小口化し、オンラインで売買することになります。そのため、不動産投資と同様に安定的な家賃を源とする収入を得ながら、上記不動産投資のハードルをクリアするメリットが生まれています。
・鑑定評価、ERレポート等をもとにプロが運用に適すると判断した物件のなかから選択できる。
・スマートフォンやパソコンで説明書類や注意事項を確認し、オンラインで手続きが完結します。
・1口単位で取引できるため、まとまった金額から端数まで無駄なく資産運用ができます。
これらに加え、売却時が容易で、一般に数営業日後には換金が可能であり、また、不動産物件の持ち分のまま小口に分けて贈与が可能、相続時の分割も容易であるなど取扱いが非常に便利です。
つまり、不動産デジタル証券は、不動産投資の安定性と有価証券投資の利便性・安心感のいいとこ取りを実現した商品であるといえるでしょう。
はじまる…「スマホで気軽に不動産投資」の時代
まず、東京都・渋谷のレジデンス(ケネディクス・リアルティ・トークン渋谷神南)や、神奈川県・横浜にあるリノベーションマンション(トーセイ・プロパティ・ファンド(シリーズ1))を皮切りに、兵庫県・神戸にある物流施設で世界的に有名な飲食店の倉庫、東京都・赤羽にある学生専用のマンション、草津の温泉宿と続きます。また、直近では、東京23区内のレジデンスを3棟パッケージにしたものも組成されました。
REITとは異なり、不動産デジタル証券は個別の物件がしっかりとみえます。物件がユニークで分かりやすい点も魅力のひとつです。草津の温泉宿については、デジタル証券の保有者に宿泊割引券のトークンをプレゼントするといった計画があるようです。これが実施されれば、経済的なリターン以外の「楽しみ」も付加され、不動産デジタル証券への期待に応えるものとなるでしょう。
金額は1口あたり50万円から、運用期間は4~5年、物件価格の約半分のローンを組んでレバレッジをかけた形で利回りは3~4%台に集中しています。このような不動産物件に、スマートフォンやパソコンを使って気軽に投資できる時代が、今、まさに到来しているのです。