経営者の引退を控えた中小企業をそのまま放置しておくと、2025年にはその多くが後継者不在で廃業し、約22兆円のGDPを失う恐れがあるといいます。なぜ中小企業の廃業がこれだけのインパクトがあるのでしょうか。株式会社M&Aナビ社長の瀧田雄介氏が著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)で解説します。

いま注目されているのが第三者によるM&A

■大廃業時代を乗り切るには適切な事業承継が必要

 

こうした事態を回避するには、優秀な中小企業を存続させるしかありません。ところが、いまは親の仕事を子どもが必ず継ぐ時代ではありませんし、少子化により後継者自体がいない家庭も少なくありません。

 

そうしたなかで注目されているのが第三者による事業承継、すなわち「M&A」です。かつて、M&Aといえば「身売り」「買収」といったネガティブなイメージを持たれていましたが、昨今は重要な社会資源を次代につなぐ、有益な手段として認知されつつあります。とりわけ、大手企業に比べて売上などの事業規模が異なり後継者候補が見つかりにくい中小企業にとって、M&Aは現経営者の想いをつなぐものとして、好意的に受け入れられているのです。

 

中小企業がM&Aを受け入れ始めた背景には、いま世の中で進められているDX(デジタルトランスフォーメーション)も無関係ではありません。本来、M&Aを実施するには多くの時間と費用を要していたのが、近年はデジタル化し、会社を売却したい「売り手」と、会社を買って事業を発展させたい「買い手」を結び付ける、オンラインの「M&Aプラットフォーム」が普及し始め、低コストかつスピーディにできるようになりました。

 

これにより、いままでは費用や手間の面で二の足を踏んでいた後継者不在の中小企業経営者が、M&Aに目を向けつつあるのです。昨今は、国もM&Aプラットフォームを活用したスモール~ミドルサイズのM&Aを加速させ、大廃業時代の課題を解消しようと考えていて、今後、この市場が盛り上がることは間違いありません。

 

そして、私が代表を務める株式会社M&Aナビも、オンラインのM&Aプラットフォームを運営する会社の一つです。日本の事業承継問題を解決すべく2018年に事業参入し、これまで売り手・買い手双方の利用者拡大に努めてきました。このたびは、世の中の多くの方に危機意識を抱いていただくとともに、当事者の皆さんには行動を起こしてもらうべく筆を執りました。

 

ただし、いきなりM&Aのことばかり語っても、ピンとこない人もいるでしょう。そこで本書は「事業承継」をキーワードに、基本や「親族内」「社内」「社外」「M&A」という4つの類型それぞれについて、手順や注意点をまとめました。

 

そして、増えつつあるM&Aプラットフォームに関して述べ、いま当社が取り組んでいる、銀行など金融機関との協業の在り方について、見解を示しました。事業承継の初心者でもわかりやすい内容なので、決して難しくありません。もしより詳しく知りたい内容があれば、ぜひ近隣の金融機関に相談してみてください。

 

いまわかっているのは、このままではわずか数年後に、日本経済に大打撃を与える出来事が起きることです。それを回避できるのは、M&Aを含めた事業承継を1日でも早く進めることに他なりません。中小企業の経営者やその関係者は事業承継に正しい知識を身に付けていただき、金融機関の関係者には自分たちがこの課題を解消する当事者だと理解いただき、取引先の事業承継に寄り添っていただければ幸いです。

 

瀧田雄介
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長

 

 

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    ※本連載は、瀧田雄介氏の著書『中小企業向け 会社を守る事業承継』(アルク)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    瀧田 雄介

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