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それは「会社としての意思決定」から始まった
筆者の会社が障がい福祉事業を「やってみよう!」と決意したのは、2020年11月のことです。筆者の会社は障がい者グループホームを建てるのにちょうど良い遊休地をもっているので、「建設してはどうか」という話自体は何年も前から社内で出ていました。
とはいえ、自分たちが運営の当事者になることは考えてはいませんでした。あくまでもグループホームを建てて運営事業者に貸す、不動産投資としての形態を想定していたのです。
しかし何棟もグループホームをつくるお手伝いをしているうちに、ノウハウは蓄積されていきます。施主や運営事業者にとってのコンサルタント的な立場に立つことも多くなってきていました。その経験を活かさない手はありません。
来期の事業計画をつくる段階で「あの遊休地を活かして、自分たちでグループホームを運営してみよう」ということになりました。そこで若手幹部の一人である井上嵩浩を社長とした福祉専門の新会社を設立し、障がい者福祉事業という領域に足を踏み入れることとなったのです。
事業プランの概要
まずはどんな種類のグループホームを建てるかを決めていきました。
障がい福祉事業に参入するのは初めてなので重度よりは軽度の障がいのある方を対象にしたほうがよいだろうとの判断から、包括型グループホームを選択しました。わが社が砺波市に所有する土地の面積は約3000m2なので、定員10人の包括型グループホームを2棟、余裕をもって建てることができます。
1棟でなく2棟にしたのは、収益性を考慮してのことです。ただし開所の時期はずらすことにしました。なにぶん未経験の業種でもあり、生身の人を相手にするものでもあります。一度に多くの入居者を受け入れたはいいけれども、オペレーションが回らず入居者に不利益が及ぶことは許されません。まずは1棟のみオープンし、半年のインターバルをおいて2棟目をオープンすることとしました。
また、包括型グループホームの入居者は、基本的に昼間は仕事に出ることになります。働く場所は主に就労継続支援事業所です。就労継続支援事業所には雇用契約に基づく就労をするA型事業所と、雇用契約を結ばずに就労するB型事業所があり、A型事業所では最低賃金以上の支払いを、B型事業所では作業量に応じた工賃が支払われます。
包括型グループホームの入居対象はAないしBのほうが大半です。軽度向けのグループホームのため、一般企業で働かれている方もまれにいます。私たちはB型事業所を開設することにしました。その理由は以下のとおりです。
(1)就労支援のビジネスモデルが福祉事業の枠以外で収益を出すことができる(その事業で売上を伸ばせば収益になるし障がい者の賃金も増やしていけるため)。
(2)グループホーム入居者のなかには日中活動が決まらないと入居できない方がいるため。基本的には近所の就労支援に通ってもらえればいいと当初は考えていたが、グループホームの入居需要が高いので砺波市以外からも入居希望があると予測。そうなると必然的に日中活動の場を砺波で探す人がほとんどとなるため、日中活動が決まらず入居できないというリスクをヘッジすべく、ひとまず私たちで就労をセットにしたほうがよいと判断した。将来的には障がい者が自分らしく生きるためのお手伝いとして就労支援は必須だと考えていたが、一気にいろいろと仕掛けていくことは現実的に不可能と見て、自社でできることをB型の就労支援としてやろうと決断した。
(3)B型にした理由は、①事業が固まらないなかで最低賃金が払いづらい(約束できない)、②日中活動が決まらない人の受け皿なのでB型で問題ない(グループホームとセットで運営している強みでもある。稼ぎたい人はA型に受け入れてもらえるなら移ればいいという考え)、③砺波市でB型をやっている民間の事業者が0だったので、単純に民間で拾い切れていない層もケアできるのでは? と考えた。
グループホームとあわせて就労継続支援事業所を開設することで、入居者に住まいと就労の場所との両方を提供することができます。