(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の父が遺した自筆の遺言書には「貸しビルは3人きょうだいの長男に相続させる」とあり、資産構成全体を考えると、あまりに不平等な内容でした。これは法的に許されるのでしょうか。また、ほかのきょうだいには対抗策があるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

取り分が少ない相続人の救済制度に「遺留分」がある

全体の遺産は、3億6000万円なのに、次郎さんと花子さんは3000万円ずつ、即ち12分の1ずつしか相続できません。

 

遺言が書かれた結果だから仕方がないのかとも思えますが、このような遺言によるとあまりにも取り分が少ない相続人がいるときに救済する制度が「遺留分」となります。

 

遺留分というのは、その相続人の最低限の取り分のことをいいます。遺言や生前贈与により、遺留分を下回る場合に、請求することが可能です。

 

子ども3人が相続人のときの遺留分は、法定相続分の2分の1となります。

 

そこで、次郎さんと花子さんの遺留分は、法定相続分3分の1の2分の1で6分の1となります。

 

遺産全体の価格が3億6000万円ですから、次郎さんと花子さんの遺留分は6000万円となります。

 

しかし、遺言により、次郎さんと花子さんは残った遺産3000万円ずつしか相続できませんでしたから、次郎さんと花子さんはそれぞれ、太郎さんに対し、遺留分侵害額請求権の行使により、差額の3000万円ずつを請求できることとなります。

 

よって、正解は③となります。

 

遺留分侵害額請求権は、遺留分が侵害されていることを知ったときから1年以内に行使しなければ時効にかかってしまいます。

 

したがって、遺留分侵害額請求をするのは、なるべく早く、内容証明郵便で請求するのがいいでしょう。内容証明郵便で請求する理由は、請求したことを証明できないと1年以内に請求していないので時効にかかっていると主張されてしまうからです。

 

また、遺留分侵害額請求に対しては、土地の評価額がそんなに高くはない、まだ借金が残っている、次郎や花子は生前に贈与を受けていたから特別受益があるなど反論される可能性もあります。これらについては、また別の機会に説明したいと思います。

 

 

※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士

 

 

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