(画像はイメージです/PIXTA)

資産家の父が遺した自筆の遺言書には「貸しビルは3人きょうだいの長男に相続させる」とあり、資産構成全体を考えると、あまりに不平等な内容でした。これは法的に許されるのでしょうか。また、ほかのきょうだいには対抗策があるのでしょうか。長年にわたり相続案件を幅広く扱ってきた、高島総合法律事務所の代表弁護士、高島秀行氏が実例をもとに解説します。

自筆で書かれた遺言書…正式に認められる要件とは?

自筆で書かれた遺言が残される場合があると思います。今回のケースは、自筆で書かれた遺言がある場合の相続はどうなるかというお話です。

 

まず、自筆で書かれた遺言も有効となります。自筆で書かれた遺言は「自筆証書遺言」といいます。

 

自筆証書遺言の要件は、

 

①全文自筆で書かれていること

②日付が記載されていること

③署名捺印がなされていること

 

の3つです。

 

また、遺言者が遺言作成時に判断能力があることが前提となります。

 

これらの要件を満たしていれば自筆証書遺言は有効ですが、これらの要件を満たしていない場合、自筆証書遺言は無効となります。

 

自筆証書遺言を保管していた場合、あるいは遺言者の死後に遺言を見つけた場合には、保管している人や遺言を見つけた人は、勝手に遺言を開封してはならず、家庭裁判所に遺言の検認の申立をしなければなりません。

 

自筆証書遺言は、裁判所に検認をしてもらい、検認調書を作ってもらわなければ、遺言にもとづき、不動産の登記名義の変更もできませんし、預金の解約等もできません。

 

本件では、検認がなされたようです。

遺言書が有効なら、不平等な内容でも遺言は認められる

さて、そこで、遺言書にもとづき遺産分割がなされるのですが、遺言によれば遺産の大半を占める貸しビルを太郎さんに相続させるという不平等な内容になっています。

 

みなさんご存じのとおり、子ども3人が相続人のときの各法定相続分は3分の1ずつです。しかし、遺言では、貸しビルを太郎さんが相続するとしていることから、太郎さんが遺産の6分の5を取得することとなってしまいます。

 

これは、誰が見ても不平等ですが、民法は、不平等な遺言を作成することを認めています。

 

したがって、本件の遺言は有効なので、無効とする選択肢①は誤りとなります。

 

次に、残った遺産はどうなるかですが、太郎さんは遺言書で法定相続分である3分の1以上の遺産を取得していることから、これ以上遺産から相続することはできません。

 

よって、貸しビルを取得した長男が、その他に預金と株式や投資信託の3分の1である2000万円を取得できるとした選択肢②は、誤りとなります。

 

遺言に書かれていなかった預金、株式、投資信託合計6000万円については、次郎さんと花子さんが2分の1ずつ、即ち3000万円ずつ取得することとなります。

 

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