(※写真はイメージです/PIXTA)

大腸の検査は大変、というイメージをお持ちの方は多いだろう。しかし、バイデン大統領は大統領権限を一時的に委任してまで検査を受けに行っており、また、検査を行う側である齋藤宏章医師も「受けておかないともったいない」と強調する。なぜ大腸検査を受けるべきか。大変でも我慢するしかないのか、もっと苦痛の少ない手段はないのか。改めて知ってほしいメリットや、近年の変化について見ていこう。

米大統領はなぜ、そこまでして大腸検査を受けるのか?

■「検査などで発見するか、症状が出てから判明するか」でこれだけの差

では、なぜそこまでして大腸の検査を受けようとするのだろうか。大腸検査で発見できる病気にはいくつかあるが、その中でも、主たる目的は大腸がんの発見と予防だろう。大腸がんは、早く見つけることができれば治る可能性が高く、あるいは検査によって予防することができると考えられるからだ。

 

症状が出る前に、たとえば検診で見つける場合では、一般的に大腸がんは早期で発見されることが多いと分かっている。日本消化器がん検診学会が発表している2017年度の日本全国のがん検診の集計では、検診発見の大腸がんの約52%はステージIの大腸がんであった。これが、症状が出てから診断がついた例も含む院内登録のデータベースでは、ステージIの割合は3割弱まで落ち込む。ステージIの大腸がんは5年生存率が90%を超えており、治せる段階であることがほとんどであるため、症状が出る前に見つけることが重要になってくる。

 

あるいは、大腸検査を受けることで大腸のポリープを見つけることができる。大腸がんの大多数はポリープが成長して発生するものと知られている。このため、あらかじめポリープを切除しておくことで、がんの発生を予防することもできる。

 

考えてみると、検査などの医療行為で発生を防げるようながんは実は多くない。検査を受けておかないのはもったいない、ということで、大統領のような忙しい人でも率先して検査を受けるワケである。

無症状でも受けるべき?大腸カメラ以外の検査方法は

では特に症状がない場合でも、全員が大腸カメラを受ける必要があるのだろうか。これに関しては一概に答えのない問いではあるが、日本ではまず、症状がない方への検査としては、便潜血法による検査が推奨されている。対策型検診(市などの自治体単位や、職場単位などで全員に受けるよう促す検診)では初めから大腸カメラを受けることは推奨されておらず、便潜血法(キットで便を採取し提出する方法)が推奨されている。

 

便鮮血法は身体への負担が少ない簡易な検査で、かつ、継続することで大腸がん発見に役立つ、大腸がん死亡の減少効果が示されていることがこれまでの研究からはっきりしているためである。大腸カメラは、腸の内部を直接観察できる優れた検査であることは異論がないが、検診として提供する場合、費用の負担や全員に提供するための検査体制などの構築が難しい、大腸カメラの検査のリスクも考慮する必要があるといった背景も含まれている。

 

一方で、初めから大腸カメラを検診として用いることの有用性も様々な研究で示されつつある。実際に、米国の一部州や、ドイツ、ポーランドは大腸がん検診のプログラムに大腸カメラを組み込んでいる。日本でも検診に大腸カメラを組み込んでいくことの有効性を確かめる研究が行われており、今後、大腸カメラ検査自体が検診に組み込まれていくような流れになっていく可能性がある。

 

このように考えると、特に症状のない人はまず、市や職場が提供する便潜血検査を遂行し、これに引っかかる場合や、実際に血便などの症状がある場合は保険診療で大腸カメラをしっかりと受ける、というのが重要である。

 

また、特に大腸カメラの検査を重視したい人は、人間ドックなどの任意型の検診で大腸カメラを受ける、というのも検査のメリットを重視する立場からは有用と思われる。

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