「VTuber」に対する名誉毀損は成立するのか【弁護士が解説】 (写真はイメージです/PIXTA)

現在、VTuber・バーチャルタレントシーンが活況を呈しています。総数は優に1万人を超し、それぞれのタレントのファンも増加するなか、誹謗中傷等の被害も増加しています。今回は、「VTuberに対する名誉毀損」について、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説します。※守秘義務の点から、実際の相談内容から変更している箇所があります。

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「悪口=誹謗中傷」ではない…定義は何なのか?

近時、「インターネット上の誹謗中傷」という言葉が多く聞かれるようになりました。
「誹謗中傷」とは、根拠のない悪口を言って相手を傷つけることを意味します。

 

しかし、誹謗中傷に該当するかどうかは、法律的には「悪口かどうか」ではなく、「相手の名誉権や名誉感情を侵害しているといえるかどうか」という基準で判断されます。

 

また、自身が意図しない形でインターネット上に個人情報等を公開されてしまったり、自身のコンピューターグラフィックのキャラクターを無断で使用されたりと、誹謗中傷のほかにも権利が侵害される事例は多くあります。

 

ですので、VTuberが直面し得る問題という意味では、世の中に広く浸透している「インターネット上の誹謗中傷」という表現よりも、広く「インターネット上の権利侵害」という方がより正確かもしれません。

インターネット上で権利侵害を受けた場合の対処法

それでは、インターネット上で権利侵害をされてしまった場合、どのような手段を取り得るでしょうか。

 

まず、権利侵害となるSNSや掲示板上の投稿の削除の請求を行うことが考えられます。
削除の請求をする相手方としては、基本的にはSNSや掲示板の運営者やサーバーの管理者になりますが、場合によっては実際に投稿した者に削除を求めるというケースもあります。

 

次に、投稿した者を特定したいという意向がある場合には、いわゆる「発信者情報開示請求」の手続きを行う必要があります。

 

発信者情報開示請求の手続きを大まかに説明すると、SNSや掲示板の運営者やサーバーの管理者に対して、当該投稿に関するIPアドレスやタイムスタンプ等の開示を求め、開示されたIPアドレスをもとに特定した回線提供事業者に対して契約者情報(投稿した者の情報)の開示を求める、という流れになります。

 

また、名誉権侵害等については、刑法犯が成立する場合もあるため、最寄りの警察署に被害の相談にいき、被害届等を提出するという方法もあります。

 

なお、権利侵害となる投稿をした者を発信者情報開示請求によって特定できた場合、その投稿者に対して損害賠償の請求等を行うということも可能です。

 

以上のとおり、インターネット上で権利侵害をされた場合、いくつかの取り得る手段があるため、ご自身のご意向にあわせて、適宜弁護士等の専門家に相談のうえ、対応を検討することになります。

素性を明らかにしないで活動するVTuber特有の問題点

さて、ここまでは、いわゆるインターネット上の権利侵害について広く一般的なお話をしてきました。ここからは、VTuberに対してインターネット上の権利侵害がなされた場合、どのような問題があるのかという点について解説します。

 

VTuberに対するインターネット上の権利侵害における問題点が特に顕在化しやすいのが、いわゆる名誉権侵害(名誉棄損)のケースです。

 

名誉権侵害は、そもそも、第三者からみて誰に対してなされたものなのかということが明らかになっていなければなりません。

 

しかし、VTuberは自身の素性を明らかにせずに活動している場合が多いです。そのような場合、仮に名誉権侵害となり得る内容の投稿がなされたとしても、誰に対してなされたものなのかということが明らかでないため、名誉権侵害は成立しないということになります。

 

「投稿・配信に利用しているコンピューターグラフィックのキャラクターに対する名誉権侵害は成立しないのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら、少なくとも現状はキャラクターに対する名誉権侵害が成立するとの考え方は採用されていません。

 

それではVTuberに対する名誉権侵害について、法的に何らかの対処を行うことは可能なのでしょうか。

VTuberが法的に何らかの対処を行うことは可能なのか

まず、仮にインターネット上で自身がVTuberであることを示唆している場合や、インターネット上の掲示板等で別途これを示唆するような投稿がなされている(VTuberにおいてはプライバシー情報やいわゆる「前世」についての投稿がインターネット上になされることもあります。)等、VTuberと自身との関連性を明らかにできる場合には、その点を主張することになります。

 

なお、このプライバシー情報や「前世」についての投稿が権利侵害である場合もありますが、この点については、本記事では論じません。

 

それがない場合、VTuberとしての名称を通して自身に対する名誉権侵害が成立するとかVTuberとしての名称に対する名誉権侵害行為は自身に対する名誉権侵害行為と同義であるといった主張をすることになります。

 

実際に、インターネット上でペンネームのみ公開している者に対する、インターネット上での名誉権侵害が認められた裁判例もあります。

 

VTuberにおいても、一定期間広義の社会活動を継続していれば、インターネット外でVTuberの名称で活動していなかったとしても、名誉権侵害の成立が認められる余地がないわけではありません。

 

もっとも、必ずしもコンピューターグラフィックのキャラクターは別人格であると理解不可能なものでなくで、そのようなキャラクターを利用しているという点で、VTuberと先のペンネームの裁判例では事情が若干異なります。

個別事情や各担当裁判官の判断によるところが大きい

また、VTuberという存在それ自体が比較的新しいもので(少なくとも裁判官のなかにはそのように捉えている方もいらっしゃるものと思われます。)、裁判例の積み重ねも十分でないため、具体的な個別事情や各担当裁判官の判断によるところが大きいという点に留意が必要です。

 

加えて、VTuberの活動が具体的にどのようなものなのかということを丁寧に主張(説明)することも極めて重要です。

 

その他、名誉権侵害ではなく名誉感情侵害を主張することも1つの手段になります。

 

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所 弁護士

 

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Authense法律事務所 弁護士

第二東京弁護士会所属。中央大学法学部法律学科卒業、大阪市立大学法科大学院修了。
ベンチャーファイナンスを中心とした企業法務に注力し、当時まだ一般的な手法ではなかった種類株式による大型資金調達に関与。新たなプラットフォーム型ビジネスの立ち上げ段階からの参画や、資金決済法関連のスキーム構築の実績も有する。ベンチャー企業の成長に必要なフローを網羅し、サービスローンチから資金調達、上場までの流れをトータルにサポートする。
顧問弁護士として企業を守るのみならず、IT/ICTといったベンチャービジネスの分野における新たな価値の創造を目指すパートナーとして、そして事業の成長を共に推進するプレイヤーとして、現場目線の戦略的な法務サービスを提供している。

Authense法律事務所(https://www.authense.jp/)
Authense企業法務(https://www.authense.jp/komon/)

著者紹介

連載Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が解説!サステナビリティ経営に欠かせない企業法務のポイント

本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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