未来の自分の生き方まで変えてくれた
■行列ができる販売員が教えてくれたこと
「この世にあるか、調べてみます!」
このキラーフレーズでお客様をイチコロにするのは田代容子です。
カタログを調べても見つからない商品があっても、彼女は決して諦めません。お客様の時間が許せば宿題にしてもらってとことん調べ、それでも見つからないときは製作してくれるメーカーを探すこともいといません。
メーカーにないものは、設計図を自分でつくり提案するほどです。それゆえ彼女は「キッチンハンター」と呼ばれています。
明るく元気なキャラクターと嘘のない熱心さゆえ、老若男女問わずファンがとても多く、田代が接客中でも終わるまでお待ちになるお客様も少なくありません。まさに彼女は行列ができる繁盛店ならぬ行列ができる販売員なのです。
そんな彼女のまわりには、いつも笑顔があふれています。彼女の友だちも、友だちの家族も、飯田屋の従業員たちも、彼女がいるとまわりがパッと明るくなります。
田代にお土産を持って来店し、彼女の接客を受けるお客様までいるくらいです。それは田代がどんな仕事でも時間をかけ、こちらが「もういいんじゃないか」と声をかけたくなるほど真剣に応対するからだと思っていました。
でも、それだけではありませんでした。
あるとき田代が「丁度よい」という詩を教えてくれました。石川県にある真宗大谷派常讃寺の坊守(ご住職の奥様)藤場美津路さんがつくられたものです。
お前はお前で丁度よい
顔も体も名前も姓も
お前にそれは丁度よい
貧も富も親も子も
息子の嫁もその孫も
それはお前に丁度よい
幸も不幸も喜びも
悲しみさえも丁度よい
歩いたお前の人生は
悪くもなければ良くもない
お前にとって丁度よい
地獄へ行こうと極楽へ行こうと
行ったところが丁度よい
うぬぼれる要もなく卑下する要もない
上もなければ下もない
死ぬ月日さえも丁度よい
うまくいかないことがあっても、うまくいくことがあっても、それは自分自身を映す鏡で、現在の自分を映しているにすぎないことをこの詩は教えてくれると彼女は言います。
田代は決して人の悪口や不平不満を言いません。「楽しい」「嬉しい」「ラッキー」「幸せ」「ありがとう」と言い続け、いつもニコニコしています。だから、彼女には悪口を言わない友だちや、悪口を言わない同僚、悪口を言わない家族が集まってくるのです。
「何が起きたとしても、それはその人にとってちょうどよいタイミングでしか起こらず、必ずその人に意味があることしか起こりません」と田代。だから、彼女は「自分に起こることには感謝しかない」と言います。
今の僕だけでなく、未来の僕の生き方まで変えてくれた大切な教えです。 すべてが「あなたにとって丁度よい」のです。
飯田 結太
飯田屋 6代目店主