(※写真はイメージです/PIXTA)

暗号資産取引で発生した所得には税金がかかるため、確定申告が必要になる場合があります。 株式投資やFXと違って、暗号資産取引の確定申告では正確な利益額を「投資家本人が」算出する必要があり、小まめに取引を行う方であればあるほど計算は複雑なものとなります。 本記事では利益額の計算にあたっての必須知識「移動平均法・総平均法」についてみていきましょう。暗号資産税務計算の支援サービスを提供する株式会社Aerial Partnersの代表取締役・沼澤健人氏が解説します。

大きな差が生まれることも…「総平均法」で計算すると

■総平均法

 

総平均法

 

次に総平均法では、1年間(1月1日〜12月31日)に購入した金額の合計を、1年間に購入した暗号資産の数量の合計で割って取得価額を算出します。 

 

このケースでは、①②④のBTCの購入金額合計である525万円を、購入数量合計3BTCで割って計算された175円/BTCという取得価額を一律で利用します。 

 

[100万円(①の時価)+150万円(②の時価)+275万円(④の時価)]÷3(①+②+④の購入数量)=175万円 

 

したがって、ケース2の損益額はこのような計算になります。 

 

200万円(③の売却価格)–[175万円(取得価額)×1BTC(③の売却数量)]=25万円(損益額) 

 

上記で算出した損益額を比較してみると、移動平均法では75万円、総平均法では25万円と大きく異なる結果となりました。

 

それぞれの算出方法では取得価額を計算するタイミングが異なるため、このような大きな差が生まれることがあるのです。

 

なお、この差額は単年度におけるものであり、投資期間全体でみた長期的な利益額(または損失額)は一致します。

「移動平均法」と「総平均法」それぞれの特徴

移動平均法・総平均法には、それぞれ以下のような特徴があります。

 

【移動平均法】

 

  • 暗号資産の購入回数に応じて計算の手間が増えるので煩雑化しやすい
  • 体感に近い計算結果となる
  • 年度中に損益計算ができるため、所得の見積りや納税資金の準備を行いやすい

 

【総平均法】

 

  • 年間の暗号資産取引を全て集計するため手軽に計算がしやすい
  • 購入タイミングや市場のトレンドによって体感から離れた計算結果になりやすい
  • 年度が終わった後の計算となるので納税資金の準備期間が短い

 

それぞれの算出方法が持つ特徴を抑えたうえで、計算方法を選択する必要があります。

算出方法は「3年間」変更することはできない

移動平均法と総平均法で異なる特徴があることを踏まえ、「自分にはどちらの算出方法が向いているのだろうか?」と思った方もいるでしょう。

 

「今年は移動平均法で算出して、来年は総平均法で算出してみよう…」と考えている方もいるかもしれません。しかし、「毎年計算方法を変更して利益額が低い方を選択する」ということはできません。

 

というのも、確定申告時にどちらの計算方法を選択したか、報告の届け出を行う必要があり、一度選択した計算方法は原則として3年間変更ができないからです。

 

なお、算出方法を選択しなかった場合、原則として総平均法が適用されます。

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