いつも支えあってきた仲良しの義理姉妹。姉の認知症進行が深刻になり、「老々介護」状態になってしまいました。のぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏が、実際のエピソードをもとに高齢の姉妹が陥った「深刻な末路」をみていきます。

認知症進行により増える負担に、義妹は寝込むように…

自分のことは自分でやってもらいたいと強く感じた板垣さんは、手島さんにそのことを伝えようと決心しました。「水道代の支払いは代わりに済ませたよ。でもお義姉さん、次からはもう自分でやってほしいんです。私も腰の持病があるから……」と話すと、手島さんからは思いもよらぬ返事が返ってきました。「何のことだったかね」

 

手島さんは、板垣さんに支払いを頼んだことなど忘れてしまっているのです。人の話を本当に理解しているのかと思い板垣さんが、買い物のレシートを手島さんに見せながら、「この分、スーパーで買って昨日冷蔵庫に入れたのよ。費用は私が立て替えているから返してくれる?」と伝えても、「そうやったかね」とまったく意に介しません。

 

板垣さんは、前から様子がおかしいとは感じていました。そしてこの時、手島さんの認知症が進んでいることを確信しました。最初の頃は、年相応の物忘れかと思っていました。しかし今は確実に、自分の生活に対する関心を失っています。板垣さんのサポートなしでは生活することが難しいのは確実です。

 

日常会話においても、昔のことを繰り返し言うばかりです。特に、仕事をしていた頃のことを繰り返すようになっています。「株式会社○○化成の経理をしていた」「上司と結婚するか迷ったが、母が心配でやめた」その一方で、短期記憶は弱くなっているようです。

 

板垣さんは自分が手伝えることはしてあげないとと思いつつも、これまでの負担が重荷になり寝込むようになってしまいました。これ以上、手島さんの自宅や金銭の管理を1人で担うのはあまりに負担が大き過ぎます。親戚とはいえ、人の通帳を預かっていることに対する抵抗も感じています。

 

これまで、板垣さんは、手島さんのために使った費用を出納帳に記録しレシートをノートに糊付けしてきました。これができたのも、少しの間という思いがあったからです。

 

〝早く誰かに代わってもらいたい〞という悲痛な心の叫びが板垣さんから聞こえてきます。

 

 

岡 信太郎

司法書士のぞみ総合事務所

代表司法書士

 

 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。
※登場人物は全て架空の人物であり、守秘義務に反しないようにストーリーを展開しています。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

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