認知症進行により増える負担に、義妹は寝込むように…
自分のことは自分でやってもらいたいと強く感じた板垣さんは、手島さんにそのことを伝えようと決心しました。「水道代の支払いは代わりに済ませたよ。でもお義姉さん、次からはもう自分でやってほしいんです。私も腰の持病があるから……」と話すと、手島さんからは思いもよらぬ返事が返ってきました。「何のことだったかね」
手島さんは、板垣さんに支払いを頼んだことなど忘れてしまっているのです。人の話を本当に理解しているのかと思い板垣さんが、買い物のレシートを手島さんに見せながら、「この分、スーパーで買って昨日冷蔵庫に入れたのよ。費用は私が立て替えているから返してくれる?」と伝えても、「そうやったかね」とまったく意に介しません。
板垣さんは、前から様子がおかしいとは感じていました。そしてこの時、手島さんの認知症が進んでいることを確信しました。最初の頃は、年相応の物忘れかと思っていました。しかし今は確実に、自分の生活に対する関心を失っています。板垣さんのサポートなしでは生活することが難しいのは確実です。
日常会話においても、昔のことを繰り返し言うばかりです。特に、仕事をしていた頃のことを繰り返すようになっています。「株式会社○○化成の経理をしていた」「上司と結婚するか迷ったが、母が心配でやめた」その一方で、短期記憶は弱くなっているようです。
板垣さんは自分が手伝えることはしてあげないとと思いつつも、これまでの負担が重荷になり寝込むようになってしまいました。これ以上、手島さんの自宅や金銭の管理を1人で担うのはあまりに負担が大き過ぎます。親戚とはいえ、人の通帳を預かっていることに対する抵抗も感じています。
これまで、板垣さんは、手島さんのために使った費用を出納帳に記録しレシートをノートに糊付けしてきました。これができたのも、少しの間という思いがあったからです。
〝早く誰かに代わってもらいたい〞という悲痛な心の叫びが板垣さんから聞こえてきます。
岡 信太郎
司法書士のぞみ総合事務所
代表司法書士
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】