(※写真はイメージです/PIXTA)

登山をするために山に入る時、「登山届」を提出します。万が一の遭難があったときに迅速な救助活動をするために利用されます。ここ数年、自治体によって条例となって登山届の提出が義務化されている地域が出始めました。渡瀬裕哉氏が著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)で登山を楽しむ発想の転換を解説します。

規制ができるとそのリスクへの意識が低下

ビジネスも同様ですが、何でもかでも最初から役所、つまり公助の部分に頼ったり、計画づくりが事実上他人任せだったり、役所の監督下に置かれた方が楽だと考えると、新しいことなどできなくなってしまいます。

 

だから自分たちでモラルを持って新しい試みををやる、それが自分や社会のためになり、さらに新しいことを生み出す、そういうサイクルができることが大切なのです。登山も自分で対処できる水準を上げれば上げるほど、より高く険しい山にも挑戦できる、まさにベンチャースピリットです。

 

現在の日本は規制大国です。何か大きな社会問題が起きれば、すぐにメディアが「役所は何をやっているのか!」と騒ぎます。役所側は仕方がないから新しい規制をひとつ作ります。何かを義務付けたり、罰則ができたりして、世間は「あんな問題があったし、とりあえずこれで防げるならよかったね」と何となく満足します。

 

ところが、その規制ができることによって、本来はそのリスクに対処するという意識がなおざりになってしまいます。別の問題が出てきたら、またメディアが騒ぎ、また規制がひとつできる……今は、こういったサイクルが休まず動いています。

 

これが続いていくことによって起きるのは、誰も自主的に責任を取らないモラル・ハザードの社会です。問題が起きたとき、本当は民間企業や互助会のアイディアで克服できるはずのものでも、行政による規制がかかることで規制に対応する仕事が増え、アイディアを生み出す動機がなくなるからです。

 

同時に、規制を作る役所の人たちも、ひとつ規制が増えるたびに仕事が増えます。これでは民間と役所の関係ばかりが回っていて、本来民間が生み出すはずの新しい付加価値にエネルギーが向かいません。それよりも、役所の人たちにも民間をもっと信頼してもらうこと、信頼に足るスキルを民間側も上げることによって、本来持っている民間のスキルで問題を解決できれば、行政と民間の信頼関係もできて罰則や禁止は要らなくなります。そのための知恵を絞った方が、レジャーもビジネスも楽しめます。

 

そうして楽しんで活動をし、スポーツをして、ビジネスや文化が日本でどんどん育っていく、日本経済も活発になる、そういうサイクルに発想を転換するのが重要なのです。

 

渡瀬 裕哉
国際政治アナリスト
早稲田大学招聘研究員

 

 

※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

渡瀬 裕哉

ワニブックス

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