都合の悪い「負債等だけ」の相続放棄はできない
次に、相続放棄するに当たって、注意しなければならないことは、相続放棄をする場合は、プラスの資産も相続できなくなるということです。
本件で、連帯保証債務1億円に対し、4000万円の自宅を持っていて預金も1000万円くらいあったとしましょう。相続放棄をすると、連帯保証債務1億円も負わなくて済みますが、4000万円の自宅や1000万円の預金も相続することはできません。
自分に都合の悪い負債等だけの相続放棄はできないのです。
したがって、資産や負債が多い場合、相続放棄をするかどうかについては、先ほど説明した熟慮期間の伸長の制度を利用して、よく調査検討して、相続放棄をするか、相続するかを決められたらいいと思います。
また、被相続人の死後に、遺産を処分してしまうと、相続を承認したこととなってしまい、相続放棄ができなくなってしまうので、これも注意が必要です。
本件でいえば、奥さんの陽子さんが、太一さんの死亡後、太一さん名義の預金を下ろして生活費に当ててしまうなどをすると、預金を下ろすことは遺産の処分に当たるので、相続放棄ができなくなってしまうのです。
相続放棄は、相続人が被相続人の債務を負わなくても済む相続人を守る便利な制度ですが、上記のような注意点があるので、気をつけてください。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
高島 秀行
高島総合法律事務所
代表弁護士
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】