(※写真はイメージです/PIXTA)

ある資産家の夫婦は、繊細な性格で独身の末っ子の行く末を気にかけていました。自分たちのそばに置き、早い段階で資産移転を行うなど、周到に対策を立ててきましたが、安心したのもつかの間、末っ子の病気が判明します。残された時間は多くなく、家族は対応に追われますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

「二男の財産→両親」の流れでは、相続税が2度発生

配偶者と子どものない二男の相続人は両親です。二男が先に亡くなり、相続税を払って財産を両親に戻しても、両親が亡くなったあとには、長男長女がまた相続税を払うことになります。それを回避するために、筆者は長男長女への遺贈を提案しました。

 

筆者は田中さん夫婦に急いで必要書類を集めてもらい、公正証書遺言を作るサポートを開始しました。二男は病院のベッドの上で、覚悟を決めたかのような冷静な表情を見せていました。そして時折、こらえきれない悲しみで涙をこぼす母親に、優しく声をかけて励ましていました。

 

人生には予想外の出来事、人の力ではどうにもできない出来事が起こるのです。

公証人は病院へも出向いてくれる

公正証書遺言は、今回のケースのように、本人が公証役場へ足を運べない場合でも公証人のほうが出張することで作成可能です。病院はもちろん、ホスピスや老人ホームなどにも出向いてサポートしてくれます。印鑑証明書、戸籍謄本、不動産の固定資産税納付書等、必要書類が揃ったうえで内容が決まっていれば、原稿作成のスピードによるものの、翌日にも作成は可能です。

 

先に述べたように、配偶者・子のない単身者の相続人は両親です。しかし、両親が相続すれば、長男長女の相続の際に再び相続税が発生します。兄と姉へ遺贈することで相続税の二重払いを回避できるのですが、相続人でないきょうだいに財産を渡すには、遺言書が必要なのです。

 

筆者、筆者の事務所スタッフ、公証人は、田中さん夫婦と一緒に二男の病室で遺言書作成に立ち会いました。両親と共有していた不動産の名義や、コツコツ積み上げてきた預貯金の分配方法についても、落ち着いた様子で言葉にしていきました。

 

1ヵ月後、田中さんご夫婦から二男が旅立ったとの連絡がありました。子どもを見送ったご夫婦の胸中を思うと、本当に言葉にできない気持ちですが、人生には人の力では抗えないことが起こります。田中さんのご家族には、亡くなったご二男のぶんまで、お元気で長生きしていただけたらと願ってやみません。

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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