本記事は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社の「2022年の豪ドル相場の注目点と展望」最新レポートを転載したものです。

足元で急拡大する豪州でのオミクロン株感染

豪州では、2021年末からオミクロン株の感染が急拡大しています。新規感染者数はデルタ株の第三波を大幅に上回り、足元では1日当たり数万人レベルに急増しています。もっとも、豪州では16歳以上の人口の90%以上が2回のワクチン接種を完了させていることもあり、感染者数の急増と比べて死亡者数は抑制傾向にあります(図表3)。

 

(出所)豪公共放送ABC、豪州保健省(期間)2020年1月1日~2022年1月13日(新規死亡者数は2020年4月6日~)
[図表3]豪州の新型コロナウイルスの新規感染者数と新規死亡者数の推移 (出所)豪公共放送ABC、豪州保健省(期間)2020年1月1日~2022年1月13日(新規死亡者数は2020年4月6日~)

ブースター接種加速で経済活動は再び活性化へ

豪州政府は新型コロナウイルスと経済活動の共生を図るため、足元のオミクロン株拡大でもロックダウン(都市封鎖)は行わない方針を維持しています。

 

2021年後半の感染第三波(デルタ株)の終息以降、豪州では順調な経済活動の再開が進んできましたが、足元の感染第四波を受けて2022年1月の経済活動は小幅に鈍化する傾向にあります(図表4)。

 

(出所)アップル(期間)2020年1月19日~2022年1月12日 (注)モビリティ指数は人の移動量を集計した指数。
[図表4]豪州のモビリティ指数の推移 (出所)アップル(期間)2020年1月19日~2022年1月12日
(注)モビリティ指数は人の移動量を集計した指数。

 

ただし、豪州ではワクチンのブースター接種が急速に進みつつあり、すでに3回目接種率は16歳以上人口の20%超の水準に達しています(図表5)。現在の接種トレンドが続けば、2022年上半期中にも豪州におけるオミクロン株感染は終息に向かい、経済活動の再活性化が豪ドル相場の見直し材料として浮上する可能性がありそうです。

 

(出所)豪州保健省、covid19data (期間)2021年7月3日~2022年1月13日
[図表5]豪州の新型コロナウイルス・ワクチンの接種率 (出所)豪州保健省、covid19data
(期間)2021年7月3日~2022年1月13日

グリーンフレーションが豪州の資源価格を押し上げ

最後に、足元の豪ドル相場には高水準のコモディティ価格と比較した割安感が残されています(図表6)。

 

(出所)ブルームバーグ、豪州準備銀行 (期間)2000年1月~2021年12月
[図表6]豪ドル相場とコモディティ価格指数の推移 (出所)ブルームバーグ、豪州準備銀行
(期間)2000年1月~2021年12月

 

2021年後半には、豪州の最大の輸出資源である鉄鉱石の価格下落が進んだものの、足元では1トン=120~130米ドル近辺まで価格回復が進んでいます。中国では2月の北京五輪にかけて環境対策としての鉄鋼減産圧力が続く可能性が高いものの、五輪後の鉄鋼生産の回復期待が足元の鉄鉱石価格を支えている模様です。

 

また、2021年には世界的な脱炭素化の動きがコモディティ価格の上昇を引き起こす「グリーンフレーション」が顕在化しました(図表7)。すでに足元でも鉄鉱石に次ぐ豪州の輸出資源である石炭や液化天然ガスの価格が大きく上昇しており、2022年も豪州の資源はグリーンフレーションの観点から注目度が高まりそうです(図表8)。

 

(出所)ブルームバーグ(期間)2019年1月1日~2022年1月13日 (注)鉄鉱石は中国向け輸出価格、液化天然ガスはアジアの先物価格、原料炭は先物価格、一般炭はニューカッスル港輸出価格。
[図表7]豪州の主要資源価格の推移 (出所)ブルームバーグ(期間)2019年1月1日~2022年1月13日
(注)鉄鉱石は中国向け輸出価格、液化天然ガスはアジアの先物価格、原料炭は先物価格、一般炭はニューカッスル港輸出価格。

 

(出所)各種資料よりフランクリン・テンプルトン作成 (注)「グリーンフレーション」とは脱炭素化政策が物価上昇をもたらす現象。「グリーン」と「インフレーション」を組み合わせた造語。
[図表8]脱炭素化政策がもたらす「グリーンフレーション」の構図 (出所)各種資料よりフランクリン・テンプルトン作成
(注)「グリーンフレーション」とは脱炭素化政策が物価上昇をもたらす現象。「グリーン」と「インフレーション」を組み合わせた造語。

 

和泉 祐一

フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社

 

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