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DXは、リソースに限りがある会社こそ導入すべき
会社の会計の自計化とともに、ぜひ考えていただきたいのが会計業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。
「DXなんて、うちのような中小企業には難しい」という社長もいると思いますが、そんなことはありません。むしろ、社員などのリソースに限りのある中小企業こそ、率先してDXに取り組むべきです。
DXは、「ITを有効かつ継続的に活用することで、企業の業務から組織・文化・風土までを変革するとともに、企業が新たな価値を創出して、社会や人々の生活を向上させる取り組み」を意味します。
このように、個別の業務のみならず、会社そのものを変革するために、デジタルを用いるのがDXの基本です。
DXが取り入れられている領域はさまざまですが、大企業を中心に、経理や人事、労務管理など、主にバックオフィスと呼ばれる仕事から浸透しています。
DX導入の背景に「働き方改革」に伴う制度改正あり
この背景にあるのが、働き方改革に伴う制度改正です。中小企業に関係するものもいくつか法改正されています(予定のものも含む)。
2020年4月:残業時間の上限規制開始
2020年12月:年末調整の電子化
2021年4月:同一労働・同一賃金の導入
2022年1月:改正電子帳簿保存法
2022年10月:社会保険の適用拡大(従業員101人以上)
これらのトピックは、「多様な働き方を認め、企業の生産性を高める」という文脈のなかにあります。少子化による労働人口の減少や最低賃金の引き上げに伴い、より少ない人数で事業を回していかざるを得ないということです。DXによる業務効率化は、中小企業にとって喫緊の課題といえます。
会計業務は、デジタルと相性がいいとされ、最初に手を付けるには好適です。例えば、経理業務はこのようにDXすることができます。
●通帳を見ながら、一件ずつ取引を帳簿につけている。
→ 会計ソフトとインターネットバンキングを連携して、帳簿を自動作成
●振込業務のために毎月銀行に出向いている。
→ インターネットバンキングを利用し、社内で振込手続きを完結
●日々の現金取引を小口現金で処理している。
→ キャッシュレス決済で経費精算と帳簿作成を自動化
●紙の証憑を見ながら、一件ずつ取引を帳簿につけている。
→ 証憑をスキャンし電子データとして保存し、会計ソフトを連携して、帳簿を自動作成
ほかにも、給与計算ソフト、請求管理ソフト、タブレットPOSレジ等と会計ソフトを連携して、帳簿を自動作成できるところまでDXの実務は進んでいます。
ポイントは「情報のデジタル化」「業務のデジタル化」
このように会計業務はDXによりさまざまな効率化が図れるわけですが、ここでポイントとなるのが、「情報のデジタル化」と「業務のデジタル化」です。
これまでの紙ベースの情報管理や業務を見直すことができれば、帳簿を作成する時間を大きく削減することができます。そうして浮いたリソースを、会計を分析し、経営に活かすなど、人間でなければできない業務に振り分ければ、会社の成長につながります。
会計業務をDXで変革する際、「なにから始めればいいのか分からない」という人もいると思います。そこで私が提案したいのは、「会計ソフトを起点としたDX」です。会計ソフトの機能を最大限活用すれば、情報の電子化や業務体制の見直しのヒントを得ることができます。そのためにも、会計ソフトを選ぶときは、DXと相性のよいものを選ぶ必要があります。
小形 剛央
税理士法人小形会計事務所 所長
株式会社サウンドパートナーズ 代表
税理士・公認会計士
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