(写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの対策として、世界各国で金融緩和政策が取られていましたが、ここにきて金融政策正常化の動きが広まっています。本記事では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が世界各国の金融政策・市場動向を分析します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の世界各国の金融政策・市場動向に関するレポートを転載したものです。

あなたにオススメのセミナー

    【関連記事】2022年、日本が閉塞感に包まれていても「株式投資」をすすめる理由

    概要:主要国でも金融政策正常化の動きが広がる

    21年12月に各国で実施された金融政策および、株価・為替の動きは以下の通り。

    ※本稿では金融政策はG20について確認する。また、株価・為替についてはMSCI ACWIの指数を構成する48か国・地域について確認する。中国と記載した場合は中国本土を指し香港は除く。また、香港等の地域も含めて「国」と記載する。本文中の先進市場と新興市場の区分についてはMSCIの分類に基づく。

     

    [図表1]各国の金融政策
    [図表1]各国の金融政策

     

    【株価・対ドル為替レートの動き】

    ・株価はオミクロン株への警戒感から11月下旬に下落したものの、12月は持ち直した(図表2)。

    ・為替レートは横ばい圏での動きとなった(図表3)。

     

    [図表2]世界株価の動向 [図表3]対ドル為替レートの動向
    [図表2]世界株価の動向
    [図表3]対ドル為替レートの動向

    金融政策:先進国でも金融政策正常化の動き、トルコと中国は利下げ

    まず、主要地域の金融政策を見ていく。12月は日米欧の主要国(G7)すべてで金融政策を決定する会合が開かれた。

     

    このうち、イングランド銀行は0.15%の利上げ(0.10→0.15%)、FRBは債券購入額のさらなる縮小(テーパリングの加速、900億→600億ドル/月)を決定した。

     

    また、ECBはコロナ禍で導入した資産購入策(PEPP)の22年3月での終了とその後の資産購入計画方針(平時の資産購入策であるAPPのPEPP終了後の増額およびその後の段階的な購入額の縮小)を示し、日本銀行も主にコロナ禍で導入した大企業・住宅ローンを対象とした資金繰り支援策の終了(CP・社債等買入れ額の平常化および新型コロナ対応特別オペの民間債務担保分を終了、中小企業向けの支援策は延長)を決定した。

     

    カナダ銀行は12月の会合では特に金融政策方針を変更しなかったが、21年4月以降に量的緩和策を段階的に縮小し、10月に国債の新規購入を終了することを決定している

    ※カナダ銀行では金融政策方針の決定とは別に、12月に金融政策の枠組みを更新した(2022-26年における金融政策が対象)。内容としてはインフレ目標を2%とした従来の枠組みが基本的には踏襲されている。ただし、インフレ目標からの上下1%ポイントの乖離が許容されているという柔軟性を活用する(筆者の理解では、例えば、実効的な金利の下限制約が意識される場合は、2%より高めのインフレ率が許容することを生かして金融緩和を長期間実施する、といった政策を行う)ことや、労働市場のデータを十分に考慮することなどが明示されている。

     

    イングランド銀行はG7のうち、コロナ禍後で初めて利上げしたことになる。一方、ECBや日本銀行ではコロナ禍で導入した一部の支援策が続いているため、金融引き締め姿勢の温度感は各国ごとに異なるが、総じて先進国でも平時の金融政策へ回帰する動きが進められたと言える。

     

    それ以外の国では、ポーランド、ブラジル、ハンガリー、メキシコ、ロシア、チェコで政策金利の引き上げが決定された。ブラジル、ハンガリー、ロシアは7会合連続、メキシコ、チェコは5会合連続、ポーランドは3会合連続での利上げとなる

    ※なお、ハンガリーは11月30日に政策金利(ベースレート)の変更とは別に、担保付貸出金利とON預金金利を引き上げており、誘導目標の上限、下限(いわゆるコリドー)を切り上げる(従来の上限・下限はベースレート±0.95%だったが、変更後の上限はベースレート+2.0%、下限はベースレート-0.0%とした)という実質的な金融引き締めを決定している。

     

    いずれも高インフレに対応するため、中央銀行による引き締めが続く決定となった。一方、トルコと中国では政策金利が引き下げられた。トルコでは4会合連続の金利引き下げであり、エルドアン大統領の意向に沿った利下げが続いている。

     

    インフレが加速する中で利下げが続いていることもあり、トルコリラに対する売り圧力は強いが、中央銀行は政策金利の変更とは別にリラ建て預金へのインセンティブを増やしリラ買いを促進する政策を公表している

    ※12月21日には外貨建て預金をリラ建て定期預金に変更した場合、「満期時のリラ建て預金額(利息込み)」と「設定金額の満期時為替での換算額」を比べて、大きい方が支払われる(為替損失分を中央銀行が補填する)というインセンティブを付与することが公表された。また、29日には金預金からリラ建て定期預金への変更にインセンティブが付与されることが公表された。エルドアン大統領は、20日にリラ建て預金について外貨換算価値が減少しないような保証措置を実施する発言をしており、その一環と見られる。

     

    中国では、12月は預金準備率を引き下げたほか、政策金利(1年物ローンプライムレート)も小幅に引き下げた(3.85→3.80%)。他の先進国ほどインフレ率が深刻化していないなかで、景気の下支えを図るために金融政策を緩和気味に微調整したものと見られる。

     

    次ページ金融市場:オミクロン株への警戒感は後退

    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月28日に公開したレポートを転載したものです。

    人気記事ランキング

    • デイリー
    • 週間
    • 月間

    メルマガ会員登録者の
    ご案内

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    メルマガ登録
    TOPへ