コロナ禍対応で特例免除54万件、標準報酬特例改定50万人…年金改革ウォッチ 2022年1月号

コロナ禍対応で特例免除54万件、標準報酬特例改定50万人…年金改革ウォッチ 2022年1月号
(写真はイメージです/PIXTA)

公的年金制度における新型コロナウイルスへの対応は、国民年金保険料の免除・猶予などさまざまなものがあります。これらの対応が年金財政や個人に与える影響について、ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫氏が解説します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の年金に関するレポートを転載したものです。

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    先月までの動き

    年金事業管理部会は、委員の3分の1が交代し、日本年金機構の2020年度の取組状況などについて報告を受けた。

     

    年金記録訂正分科会は、年金記録の訂正の状況について報告を受けた。年金数理部会は、厚生年金財政の第1号被保険者部分と国民年金財政および基礎年金財政について、2020年度の状況を確認した。

     

    ○社会保障審議会 年金事業管理部会

    12月4日(第58回) 日本年金機構の令和2年度の取組状況、その他

    URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/kanribukai-siryo58_00001.html(資料)

     

    ○社会保障審議会 年金記録訂正分科会

    12月20日(第9回) 年金記録の訂正に関する事業状況(令和2年度及び令和3年度上期概況)

    URL:https:/www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/newpage_00014.html(資料)

     

    ○社会保障審議会 年金数理部会

    12月24日(第90回) 令和2年度財政状況について―厚生年金保険(第1号)ほか

    URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000198131_00020.html(資料)

    ポイント解説:コロナ禍に伴う保険料免除等による、将来の年金額への懸念

    事業管理部会では、2020年度の取組状況の一環としてコロナ禍への対応状況が報告された。本稿では、対応内容を確認し、今後の影響を考察する。

     

    1.コロナ禍への対応内容:国民年金保険料の免除や厚生年金の標準報酬月額の特例改定(引下げ)等標準報酬月額の特例改定(引下げ)

     

    等公的年金制度におけるコロナ禍への対応の1つは、国民年金保険料の免除・猶予・学生納付特例の臨時特例である。

     

    コロナ禍の影響で免除相当まで所得が低下する見込みがある場合に、簡易な手続きで国民年金保険料の免除などを受けられる。2020年5月1日に受付が始まり、本稿執筆時点では2021年度分についても実施されている。

     

    厚生年金では、まず、事業主に対する厚生年金保険料の納付猶予の特例が実施された。コロナ禍の影響で事業等の収入が相当に(概ね20%以上)減少した場合に、担保や延滞金なしで1年間の猶予を受けられる。2020年4月30日から施行され、2020年分を対象に2021年2月末まで申請を受け付けた

    ※その後も猶予を受けたい場合は、通常の猶予を申請することになる。

     

    また厚生年金では、個々人の保険料額の算定基礎となる標準報酬月額について、特例改定も実施されている。休業手当の支給など休業で給与が著しく低下した場合、通常の随時改定では低下の4月目に改定されるが、特例改定では翌月に改定され、保険料の金額も下がる。2020年6月26日に受付が始まり、本稿執筆時点では2021年12月までの減給を対象に2022年2月末まで届出を受け付けている。

     

    受給者については、障害状態確認届(診断書)の提出期限延長が実施されている。

     

    [図表1]公的年金制度におけるコロナ禍への対応
    [図表1]公的年金制度におけるコロナ禍への対応

     

    2.コロナ禍対応の影響:個人の将来の年金額が減少する要因に

     

    これらのコロナ禍への対応は、規模感から考えると年金財政には大きな影響を与えないが、個人には一定の影響がある。保険料の猶予は一時的な延納に過ぎないが、国民年金保険料の免除や厚生年金の標準報酬月額の特例改定(引下げ)は将来の年金額に影響するため注意が必要である。

     

    国民年金保険料を納付すると将来に基礎年金を受け取れるが、基礎年金の金額は保険料の納付月数に比例し、基礎年金の財源は保険料と国庫等の負担で半額ずつ賄われている。そのため国民年金保険料が全額免除された場合、免除期間に対応する年金額は保険料を全額納めた場合の半額となる

    ※全額免除のほか、3/4免除、半額免除、1/4免除があり、各期間に対応する年金額は保険料を全額納めた場合の5/8、6/8、7/8。つまり、保険料を全額納めた場合の半額は保険料の納付割合に関係なく支給され、残りの半額は保険料の納付割合に比例する。なお、産前産後期間に対する免除制度では、保険料は全額免除されるが、年金額は全額納付と同じ扱いとなる。

     

    保険料を全額納めた場合と同額の年金を得るためには、免除後10年以内に保険料を納める必要がある※。

    ※32年度以上前の保険料を納める際には、2年度以内に納めた場合よりも保険料額が高くなる(加算率は新発10年国債利率を勘案して決まる。例えば、2021年度に2018年度の保険料を納める場合は、2020年度までに納めた場合と比べて約0.1%高い)。

     

    厚生年金の標準報酬月額が引き下げられると、月々の保険料は標準報酬月額×18.3%(これを労使折半)なので、給与から引き去られる保険料が下がる。

     

    これと同時に、将来の厚生年金額(2階部分)は現役時代を通算した平均の標準報酬額に比例するため、標準報酬月額が引下げられると、それに応じて平均標準報酬額が減り、将来の厚生年金額が低下する要因となる。

     

    給与の水準がある程度回復すると翌月から標準報酬月額が引き上げられるが、国民年金保険料の追納のように引き下げられていた期間を埋め戻すことは出来ない。

     

     

    中嶋 邦夫

    ニッセイ基礎研究所

     

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月28日に公開したレポートを転載したものです。

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