(写真はイメージです/PIXTA)

新型コロナウイルスの対策として、世界各国で金融緩和政策が取られていましたが、ここにきて金融政策正常化の動きが広まっています。本記事では、ニッセイ基礎研究所の高山武士氏が世界各国の金融政策・市場動向を分析します。 ※本記事は、ニッセイ基礎研究所の世界各国の金融政策・市場動向に関するレポートを転載したものです。

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    金融市場:オミクロン株への警戒感は後退

    MSCI ACWIの月間騰落率は、全体では前月比3.9%、先進国が前月比4.2%、新興国が前月比1.6%となり、大きく下落した11月から持ち直した。オミクロン株の出現でリスク回避的な動きが強くなった11月だったが、12月にはその懸念も後退している。

     

    国別の株価の動きを見ると、12月は対象国48か国中、41か国が上昇している(図表4)。

     

    [図表4]MSCI ACWI構成銘柄の国別騰落数
    [図表4]MSCI ACWI構成銘柄の国別騰落数

     

    11月は特にチェコの株価が大きく上昇し、年間の上昇率も50%を超えている。一方、12月は多くの国の株価が上昇するなか、チリの株価下落が目立った。チリでは19日に大統領選挙の決選投票が行われ、右派のカスト氏と左派のボリッチ氏が争った。結果は左派のボリッチ氏が勝利し、裕福層や鉱山会社への増税などによって投資環境が悪化するとの懸念から株が売られたと見られる(図表5)。

     

    [図表5]各国の株価変動率
    [図表5]各国の株価変動率

     

    通貨の騰落率を見ると、対ドルの27カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Narrow)が前月比▲0.1%、60カ国の貿易ウエイトで加重平均した実効為替レート(Broad)が前月比▲0.8%で、ほぼ横ばい圏での推移となった(前掲図表3)。

    ※ただし、チェコのMSCIに組み入れられている銘柄は3銘柄(国営電力会社および銀行2銘柄)で変動は個別要因による部分も大きい。例えば、銀行株は利上げによる収益改善見込みが株価を押し上げた面がある。

     

    [図表6]MSCI ACWI構成通貨の通貨別騰落数
    [図表6]MSCI ACWI構成通貨の通貨別騰落数

     

    MSCI ACWIの構成通貨別に見ると、37通貨中26通貨が対ドルで上昇(ドル安)、11通貨が下落(ドル高)だった(図表6)。

     

    オミクロン株の拡大懸念によるリスク回避的な動きが一服し、積極的に利上げを進める国の通貨が対ドルで買われたと見られる。そのような中で、前述の通り大統領選があったチリペソや、金融緩和からの出口が遠いと見られる日本円といった一部の通貨に対して、ドル高傾向が進んだ(図表7)。

     

    [図表7]各国の対ドル為替レート変動率
    [図表7]各国の対ドル為替レート変動率

     

    なお、11月に急落したトルコリラは、12月の利下げ決定時にさらに売り圧力が強まったものの、エルドアン大統領がリラ建ての預金に対する外貨換算価値の保証措置を導入する趣旨の発言をしたことでリラ買いも進み、12月末の対ドルレートはほぼ11月末と同じ水準となっている。6名目実効為替レートは2021年12月20日の前月末比で算出。

     

     

    高山 武士

    ニッセイ基礎研究所

     

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    ※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月28日に公開したレポートを転載したものです。

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