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本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開した資金循環に関するレポートを転載したものです。

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    内訳の詳細:定期預金の割合が初めて2割を割り込む、投資信託は資金流入が継続

    7~9月期の個人金融資産への資金流出入について詳細を確認すると(図表6)、例年同様、季節要因(賞与の有無等)によって現預金が純流出(取り崩し)となったが、消費抑制の影響でその規模は0.1兆円とごくわずかに留まった結果、9月末の現預金残高は1072兆円(前年比38兆円増)と過去最高であった6月末時点(1073兆円)からほぼ横ばいとなった。内訳では、流動性預金(普通預金など)への純流入(4兆円)が進んだ一方、定期性預金は純流出(4兆円)となった(図表7)。

     

    [図表6]家計資産のフロー(各年7-9月期) [図表7]現・預金のフロー(各年7-9月期)
    [図表6]家計資産のフロー(各年7~9月期)
    [図表7]現・預金のフロー(各年7~9月期)

     

    定期性預金からの純流出は23四半期連続で、この間の累計流出額は65兆円に達している。この結果、定期性預金が個人金融資産に占める割合は19.8%まで低下し、現行統計で初めて2割を割り込んでいる。一方で、この間の流動性預金への資金流入は189兆円に達しており、流動性預金が個人金融資産に占める割合は28.3%まで上昇している(図表8)。預金金利がほぼゼロであるにもかかわらず、引き出し制限があって流動性の低い定期性預金からの資金流出には歯止めがかかっていない。定期性預金の残高は未だ396兆円もあるため、今後も大幅な資金流出が避けられない。

    ※ 2005年以降

     

    [図表8]流動性・定期性預金の個人金融資産に占める割合
    [図表8]流動性・定期性預金の個人金融資産に占める割合

     

    次に、リスク性資産への投資フローについては、代表格である株式等が0.3兆円の純流入(前年同期は0.7兆円の純流入)となったほか、投資信託も1.7兆円の純流入(前年同期は0.7兆円の純流入)となった(図表6)。投資信託の純流入は6四半期連続で、純流入の規模も2期ぶりに1兆円を超えている。また、企業型確定拠出年金(401k)内の投資信託が0.2兆円の純流入となったほか、対外証券投資も4四半期ぶりに純流入に転じている(図表9)。

     

    [図表9]外貨預金・投信(確定拠出年金内)・国債等のフロー
    [図表9]外貨預金・投信(確定拠出年金内)・国債等のフロー

     

    個人金融資産全体からすれば依然として規模は限定的に留まるが、内外株価が上昇したことで利益確定売りが出やすかったと推測されるにもかかわらず、意外とリスク性資産への純流入が進んだ印象を受ける。在宅勤務や外出抑制、世界経済の回復期待が追い風となって、一部の家計が敷居の低い投資信託を中心として投資に前向きになっている可能性がある。

     

    次ページその他注目点:家計の資金余剰は依然高め、海外投資家の国債保有は過去最高に

    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月20日に公開したレポートを転載したものです。

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