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本記事は、ニッセイ基礎研究所が公開した資金循環に関するレポートを転載したものです。

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    その他注目点:家計の資金余剰は依然高め、海外投資家の国債保有は過去最高に

    7~9月期の資金過不足(季節調整値)を主要部門別にみると(図表10)、家計部門の資金余剰は前期からやや縮小(10兆円→7兆円)したものの、引き続きコロナ前の水準をやや上回っている。緊急事態宣言など行動制限が続き消費が抑制されたことが要因として考えられる。また、同部門には自営業者を含むことから、政府・自治体からの給付金の受け取りも一定程度寄与しているとみられる。

     

    [図表10]部門別資金過不足(季節調整値)
    [図表10]部門別資金過不足(季節調整値)

     

    また、企業の資金過不足も引き続き余剰が続いているが、前期からは減少(7兆円→2兆円)した。世界的な供給制約や原材料価格の高騰が影響した可能性がある。

     

    一方で、コロナ対応による財政赤字で急拡大していた一般政府部門の資金不足は前期から縮小(12兆円→5兆円)しているが、コロナ前と比べると依然として高い状況にある。

     

    なお、緊急事態宣言は9月末で解除され、以降、消費にも回復がみられることから、今後、家計の資金余剰がどれだけ縮小するかが注目される。

     

    9月末の民間非金融法人の借入金残高は6月末から1兆円減少する一方、債務証券残高は1兆円増加した(図表11)。企業の有利子負債増加は止まっているものの、残高は依然高止まりしている。今後はこの返済負担が企業経営の重荷になると見込まれる。

     

    [図表11]民間非金融法人の現預金・借入・債務証券残高
    [図表11]民間非金融法人の現預金・借入・債務証券残高

     

    一方で、民間非金融法人の現預金残高は6月末から1兆円増加の321兆円と、小幅ながら過去最高を更新している。

     

    なお、7~9月期の民間非金融法人による対外投資状況(フローベース)を確認すると、対外直接投資は2.8兆円と、4~6月期の1.6兆円からやや増加した(図表12)。ただし、依然としてコロナ禍前の5年平均(2015~19年・3.7兆円)をやや下回っている※。

    ※2019年1~3月期の対外直接投資額は10.6兆円と突出しているが、これは国内製薬大手による総額6兆円の大型海外M&A完了という特殊要因が影響したものと推測される。

     

    [図表12]民間非金融法人の対外投資額(資金フロー)
    [図表12]民間非金融法人の対外投資額(資金フロー)

     

    9月末時点の国債(国庫短期証券を含む)残高は1219兆円と、国庫短期証券の減少によって6月末から5兆円減少した。

     

    主な経済主体の保有状況を見ると(図表13)、最大保有者である日銀の国債保有高は538兆円と6月末から2兆円減少し、全体に占めるシェアも44.1%(6月末も同じ)と横ばいに留まった。日銀が長期国債の買入れペースを徐々に鈍化させてきたほか、コロナ流行後に大量に買い入れた国庫短期証券が償還を迎えていることが背景にある。

     

    [図表13]預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア
    [図表13]預金取扱機関と日銀、海外の国債保有シェア

     

    また、銀行など預金取扱機関の保有高は6月末比7兆円減の166兆円となり、全体に占めるシェアも13.6%(6月末は14.1%)と低下している。

     

    一方、海外部門の保有高は6月末比2兆円増の164兆円となり、シェアも0.2%ポイント増の13.4%となった。残高、シェアともに過去最高を更新している。インフレ懸念やそれに伴う金融引き締めによって金利が上昇(債券価格が下落)するリスクが燻る米国債などを避け、金利上昇リスクの低い日本国債へ資金を振り向ける動きが続いたとみられる。

     

     

    上野 剛志

    ニッセイ基礎研究所

     

     

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    本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
    本記事は、ニッセイ基礎研究所が2021年12月20日に公開したレポートを転載したものです。

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