あなたにオススメのセミナー
【関連記事】「雇用が悪化した理由」の“誤解”…タクシー規制緩和は、運転手の生活を「滅茶苦茶にした」か【前日銀副総裁が解説】
合計特殊出生率に翻弄される自治体単位の少子化政策からの早期脱却を
「東京都は出生率が低くて未婚率も高いから、うちよりもっと少子化度合いがひどいだろう」
もし、そう考えている自治体があるならば、早急にその考え方をやめる必要がある。
自治体が自治体外との人流を考慮に入れない域内合計特殊出生率(以下、TFR)比較に翻弄されることなく、人口動態の正しい統計的理解のもとに、エリア少子化対策(自治体で生まれる子どもの実数の向上)が実施されることを願い、今回は、「都道府県市区町村における合計特殊出生率をベンチマークとした政策」からの方針転換がなぜ重要なのか、が理解可能なデータを提供したい。
最初に、そもそも「少子化対策」とは、人口の減少に直結する「出生数の減少を食い止める・出生数を増加させる」諸々の政策をいう。
この全体の戦略(strategy)の確認は非常に大切である。ゴールが異なれば、当然ながら、ゴールへの到達手段、すなわち戦術(tactics)が変わってくる。何をするためにやる政策なのか、見失わないようにしたい。
筆者のところには多くの自治体から人口減少に関する相談が寄せられているが、残念ながら今の自治体における少子化戦略では、これが最終ゴールであるかのように「TFRを上昇させること」を少子化対策に掲げる傾向が強い。人口統計学的に見れば、これは明確に「誤り」である。
一定条件のもとにおいては、TFR上昇を少子化対策の最終ゴールに掲げても誤りではないが、単純にTFR上昇のみを少子化対策の最終ゴールに掲げた場合、その自治体の人口は消滅に向かうことになる、それくらいTFRはその数値の内容を理解したうえで取り扱うべき指標である。