コロナショックは健全経営されていた会社ほど経営インパクトを受けやすい。(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナショックは鉄道各社に大きな影響を与えました。JR東海はコロナショック以外にリニア新幹線の建設が暗礁に乗り上げています。工期の延期による財務的な負担は重荷になってきます。最悪のシナリオは避けることができるのでしょうか。

東海道新幹線のコロナ禍打撃だけではなくて

2020年7月上旬に、JR東海の社長と国交省事務次官が相次いで静岡県川勝知事を訪問し、面談を行いました。内容はJR東海が2027年開通を目指して工事を進めているリニア中央新幹線の工事に関して、協定が必要な静岡県が準備(ヤード)工事や本体工事を含めた、本建設に関する工事に反対であるため、知事の理解を求めての面談でありました。

 

静岡県の反対理由は、基本的に静岡工区(11キロ余り)の工事(山の中にトンネルを作る工程)によって静岡県の水資源が損害を受け、また工事に関わる人の命の危険もある、という内容でした。本環境問題に加えて、複雑にしている他の問題は、静岡県にリニアの駅はできず、経済的なメリットを享受できない、という点です。

 

『国は2014年10月にJR東海の品川―名古屋間リニア工事実施計画を認可した。南アルプストンネルの両端に当たる山梨工区と長野工区はそれぞれ2015年、2016年に工事が始まり、いずれも工期は10年。静岡工区は2017年にJR東海とゼネコンの間で契約が結ばれた。すぐに工事に着手して、2026年11月に完了する予定だった。

 

国は認可にあたり、工事実施に際して地域の理解と協力を得ることや環境の保全を確実に実施することを求めている。静岡県は「南アルプスのトンネル工事は水資源や自然環境への深刻な影響を与えるおそれがある」としており、県内における工事に合意していない。静岡は県の北端をたった11km 通過するだけだが、この部分の工事が終わらないとリニアは開業できない。

 

リニアの駅が設置されるほかの都県と違い、静岡県はリニアが素通りする。リニアが開業しても県民には恩恵がない。一方で工事に際して環境への影響というリスクを県民が負うことになる。そのため、静岡県の川勝平太知事が「静岡県にもメリットが必要だ」と主張したこともあったが、最近はおくびにも出さず、環境問題一本槍だ。』

 

また準備(ヤード)工事と本体工事の考え方の相違、有識者会議での議論の進め方(そしてルートを変更の可能性)、加えて静岡県副知事が元国交省出身の方であり、複雑に問題がさらに絡んできています。

 

JR東海において従来稼ぎ頭であった、のぞみなど東海道新幹線が、コロナ禍において2020年4ー8月は前年比70ー80%減という乗客数になっており、またこのコロナ禍の状況がどこまで長引くか不透明な中、JR東海単独で行うと決めた本リニア新幹線の工期延期やそれに伴う財務的な負担は、同社の重荷になってくるのではないか、最悪のシナリオとしてリニア新幹線の工事撤退、という状況が現実味を帯びてくる気がしています。

 

これから交通インフラ会社に望まれる投資や事業の方面は、単なる移動促進だけでなく、人々に感染抑制の措置を取っている、という安心を提供して、移動してもらえるように促す、という取り組みだと思います。特に現段階ではPCR検査も万全ではなく、また抗体検査も精度は高くはありません。

 

そこで空港での荷物検査のように、空港や駅のゲートに、簡易的、即効性のある検査を行えるようにすれば、また中長期的には高精度で簡易的な検査へ、医薬や国の流れと一緒に共同で、投資する体制を整えるのが、交通インフラ企業において意味のある行動と思いますが、やはり難しいかと思います。

 

後藤康之
日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
国際公認投資アナリスト(CIIA)

 

 

※本連載は、後藤康之氏の著書『最強の外資系資産運用術』(日本橋出版、2021年4月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。

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