※画像はイメージです/PIXTA

税務署の調査は、本人だけでなく、取引先の銀行や証券会社も対象となります。相続税は、亡くなった人(被相続人)以外にも相続人や親族の銀行口座も調べますので、税務調査の範囲は想像よりも広範囲です。税務署が広範囲に調査できるのは、強力な調査権限と情報収集網が関係しています。税務署の銀行調査の方法と目的についてみていきましょう。

税務署が銀行口座を把握する手段

税務署が、被相続人や相続人の銀行口座を把握する方法は、3種類あります。

 

その3種類の方法を組み合わせれば、税務署はほとんどの口座を把握できます。

 

税務署は提出したすべての申告書から銀行口座を把握する

相続税の調査をする上で、税務署は申告書から銀行口座を確認しますが、所得税や法人税など、相続税以外の申告書からも調べます。所得税の申告書には、還付金口座や証券会社、保険会社など、多くの情報が含まれています。

 

証券会社を調べれば登録口座が確認できますし、生命保険会社を調べれば保険料の引落口座も確認できますので、申告書からでも銀行口座を把握することは可能です。

 

銀行口座の情報は税務署全体で蓄積されている

税務署では、税務調査で得た情報も、蓄積資料として活用しています。

 

税務調査で蓄積される情報は、調査対象者だけの情報ではありません。反面調査で調べた際に得た情報も、税務署は資料として蓄積しています(反面調査とは、調査対象者の関係先を調査することです)。

 

ですので、税務署は相続税の申告をした時点で、すでに多くの情報を把握しています。

 

税務署は法定調書で海外の銀行口座も確認している

税務署は情報源として、法定調書も利用しています。

 

法定調書とは、法人や事業者が提出する書類で、給与の源泉徴収票や不動産売買の支払調書などの書類が、法定調書に該当します。相続税で特に関係してくる法定調書は、「国外送金等調書」です。金融機関は、国外への100万円を超える送受金を把握した場合、法定調書を税務署に提出しなければなりません。

 

法定調書には、住所氏名、国外の送受金した銀行名を記載しますので、税務署は法定調書からも海外の銀行口座を把握できます。

 

国外送金等調書
国外送金等調書

相続税の調査で税務署が銀行の通帳を確認する理由

相続税の実地調査では、税務署職員が自宅に来て、被相続人の生前の状況や申告した相続財産の聞き取りをします。

 

税務署は、預金の移動状況を銀行調査でも確認できますが、通帳にしかない情報を確認するために通帳も調べます。

 

実地調査の通帳チェックは確認作業として行っている

税務署が調査で通帳を調べるのは、申告内容と税務署が把握している情報が一致するかの確認のためです。通帳を見ただけで指摘できる内容なら、実地調査しているその場で指摘をします。

 

また、一度通帳を確認した方が、後々追求しやすくなるのも通帳を確認する理由です。

 

なお、税務署は通帳を調べる際に相続人の反応も見ており、そこからも情報を得ようとします。

 

税務署は通帳から銀行手続きした人を見つけている

税務署は、銀行の通帳からも情報を読み取ります。

 

通帳にメモ書きがあれば、誰の筆跡か相続人に確認しますし、通帳の保管状況から預金の入出金をした人を特定します。

 

もし、相続人が被相続人の預金口座から自由に入出金できた場合、その相続人の口座に被相続人のお金が流れていないかを、税務署は調べます。

 

税務署の「知らないふり」は重加算税を見極めるため

税務署は、申告誤りを事前把握していても、調査の最初に誤りを指摘することはありません。なぜなら、相続人の話す内容が、嘘か本当かを見極める必要があるからです。

 

調査による追徴課税には、加算税と延滞税があります。

 

加算税には種類があり、一番重いペナルティが重加算税です。重加算税は、申告内容を意図的に隠したり、過少に申告した場合(仮装・隠ぺい行為)が対象となります。税務調査の担当職員からの質問に対して、嘘の回答をすることは、隠ぺい行為に該当し、重加算税が課される場合があります。

 

もし、税務署が事前に情報を把握していれば、相続人が嘘の回答をしているかの判断が可能です。ですので、同じ申告漏れであったとしても、ペナルティに差をつけるために、調査担当者は知らないふりをして話を聞いてきます。

意図的に隠した銀行口座ほど税務調査でバレやすい

どんなに相続財産を隠しても、隠した形跡は必ず残ります。

 

銀行口座からの不明出金があれば、税務署は解明するまで調査を止めませんので、財産を隠した分だけ、時間を浪費し、余計な税金を支払うことになります。

 

ですので、脱税をすることを勧めることはできません。

 

相続税は専門の税理士に依頼した方がいい理由

相続税を節税したい場合には、財産を隠すよりも効果的な方法が2つあります。

 

・相続税の特例を適用する

・相続税評価額を適正に計算する

 

相続税には、「配偶者に対する相続税額の軽減」(通称配偶者軽減)など、相続税をゼロまたは軽減できる制度が多く存在します。

 

しかし、これらの特例が適用可能であっても、制度自体の存在を知らなければ節税はできません。また、相続税は、毎年申告する税金ではありませんので、相続税の申告書作成が不得手・もしくは経験が少ない税理士が多くいることも事実です。

 

相続税の申告書作成に不慣れな税理士は、節税制度などにもあまり精通していません。ですので、相続税を節税し、税務調査のリスクを下げるためには、相続税を専門とする税理士に依頼することをオススメします。

 

 

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本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。

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