全国各地で増加する空き家やシャッター商店街……世界有数の人口密度を誇る東京においても、こうした「負」動産が問題となっています。そこで、増え続ける「負」動産から東京の街を救うべく、積極的な「地上げ」が必要だと、住宅ジャーナリストの榊淳司氏はいいます。その理由をみていきましょう。

少しずつ動き始めた「シャッター商店街」の再生

いずれ誰かがそこに住んだり、何かの店を開いたりするつもりなら、そのままにしておくのも選択肢の一つだ。しかし、そういった予定がまったくないシャッター商店だったら、売却してしまうのが所有者のためでもある。また、売却されたシャッター商店が別の用途の不動産に開発されれば、その地域社会にとっても好ましいことではないか。

 

このように考えてくれる人が多ければ、寂れているシャッター商店街はスムーズに蘇るはずだが、現実にはそうなっていない。それでも、少しずつ動き始めているようにも感じる。その理由は、先にも述べたように相続だ。

 

シャッター商店街で店舗を営んでいた方の多くは、「団塊の世代」以上の年代の方々である。彼らの多くはすでに後期高齢者となっている。今後、相続がそれこそ「団塊」になって発生しそうだ。そして、そういった旧店舗を受け継いだ団塊ジュニアなどの世代が、負動産を思い切って手放す決断をすればいいのだ。

 

2050年頃には、団塊世代の方々のほとんどが鬼籍に入っている。その頃には、地上げが進んだことで整然とした街並みに生まれ変わった、かつてのシャッター商店街を眺めることができるのだろうか。

 

 

榊 淳司
住宅ジャーナリスト

 

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※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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