コロナ禍で急速に普及したテレワーク……リモート環境の整備は、働き方だけでなく教育の場にも大きく影響しています。そして、この動きはコロナが収束したからといって止まるものではないと、住宅ジャーナリストの榊淳司氏はいいます。大小さまざまなオフィスや大学、マンションが立ち並ぶ東京は今後どう変化していくのか、現状を紐解きながら「2050年の東京」をみていきます。

「2050年の東京」に大学キャンパスは必要か?

また、リモートが普及した2050年の世界において、学生は必ずしも学校に通う必要性はなくなっている。

 

何よりも、講義はリモートでも受けられる。提出物や試験の類も、リモートオペレーションで十分可能なはずだ。リモートの発想を突き詰めれば、世界中どの大学で開かれている講座でも、ネット環境さえあればどこにいても受講することができるはずだ。

 

そういった世界にあって、そもそも多くの大学が東京にキャンパスを維持する必要性があるのかと、私は疑問に感じている。

 

大学が学びたい学生に学問を授ける、という本来の役割だけを果たすものと考えれば、「〇〇大学」という枠組みさえ不要になる。

 

学生は世界中の大学教授たちが行っている講座から、学びたいと思うものを選んで受講し、単位認定のためのレポートや論文をリモートで提出し、必要なら試験を受ければいいのだ。それで一定数の単位を積み上げれば、学士や修士の認定を受けるシステムとすればよいではないか。

 

そうなれば、東京大学や早稲田大学といった大学の枠組みは不要になる。

 

もっとも、この私の考えは究極の合理主義を突き進んだもので、2050年に実現しているとは思わない。2050年でも、やはり東京大学や早稲田大学という大学の枠組みは残っていて、今とあまり変わらない入学試験が行われているとは思う。

 

しかし、大学生が今のように毎日キャンパスに通うというスタイルは、かなり変化しているだろう。

 

 

榊 淳司
住宅ジャーナリスト

 


 

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※本連載は、榊淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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