2021年7~9月期実質GDP(第2次速報値)について (※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「宅森昭吉のエコノミックレポート」の『経済指標解説』を転載したものです。

 

実質GDP成長率は前期比年率▲3.6%に第1次速報値▲3.0%から下方修正

 

20年度国民経済計算年次推計反映、15年基準への変更で多くの系列で修正

 

実質GDPのコロナ禍前のピーク越えは早くても22年度入り後の可能性が大きい

 

 

●21年7~9月期実質GDP成長率・第2次速報値は前期比▲0.9%、前期比年率▲3.6%となり、第1次速報値の前期比▲0.8%、前期比年率▲3.0%から下方修正となった。通常の法人企業統計を受けての設備投資、民間在庫変動の修正に加え、2020年度国民経済計算年次推計反映、2015年基準への変更などで多くの項目が過去に遡り、修正された。

 

●実質GDP季節調整値は景気の谷の20年4~6月期501.1兆円を底に、振れを伴いつつ持ち直し傾向で21年4~6月期に537.6兆円になったあと、7~9月期532.8兆円となった。差額を採ると、20年4~6月期から21年7~9月期まで戻した額は31.7兆円である。コロナ禍前のピークはこれまでの19年7~9月期から19年4~6月期に変わったが、19年4~6月期557.3兆円から谷までの下落分56.1兆円を、21年7~9月期時点で56.5%戻した格好になっている。

 

●仮に、残り2四半期の実質GDPが前期比+2.0%(前期比年率+8.2%)ずつ伸びても、22年1~3月期は554.3兆円にとどまる。コロナ禍前のピークである557.3兆円を越えるのは早くても2022年度に入ってからの可能性が大きそうだ。

 

●7~9月期名目GDP成長率・第2次速報値は前期比▲1.0%、前期比年率▲4.1%となり、第1次速報値の前期比▲0.6%、前期比年率▲2.5%から下方修正となった。名目GDPの季節調整値は538.2兆円で直近の景気の谷だった20年4~6月期の511.9兆円と比較すると26.3兆円高い水準だが、コロナ禍前のピークだった19年4~6月期の562.0兆円と比べると23.8兆円低い水準である。

 

●7~9月期の実質個人消費・前期比は、第1次速報値の▲1.1%から前期比▲1.3%へと0.2ポイント下方修正となった。

 

●7~9月期の実質住宅投資は、第1次速報値の前期比▲2.6%から前期比▲1.6%へと1.0ポイント上方修正となった。

 

●7~9月期の実質設備投資・前期比は第1次速報値の▲3.8%から前期比▲2.3%へと1.5ポイント上方修正となった。

 

●7~9月期民間在庫変動の実質・前期比寄与度は+0.1%と第1次速報値の+0.3%から0.2ポイント下方修正となった。民間在庫投資の内訳をみると、製品在庫は前期比寄与度0.0%で第1次速報値+0.2%から0.2ポイント下方修正となった。流通品在庫は前期比寄与度▲0.0%で第1次速報値の0.0%とほぼ同じになった。法人企業統計を使って推計された原材料在庫前期比寄与度は仮置き値だった第1次速報値の▲0.0%と同じ▲0.0%だった。同じく仮置き値の仕掛品在庫前期比寄与度は第1次速報値では+0.1%だったが第2次速報値でも+0.1%だった。

 

●7~9月期実質政府最終消費支出は前期比+1.0%で第1次速報値の+1.1%から若干下方修正になった。また、7~9月期実質公共投資は第1次速報値の▲1.5%から▲2.0%に下方修正となった。公的在庫変動の実質・前期比寄与度は▲0.0%で第1次速報値の▲0.0%と変わらなかった。公的需要全体の前期比寄与度+0.1%で第1次速報値+0.2%から下方修正になった。

 

●7~9月期の外需(純輸出)の前期比寄与度は第1次速報値の+0.1%から0.1ポイント低下し0.0%になった。実質輸出の前期比▲0.9%で第1次速報値の▲2.1%から1.2ポイント上方修正となったが、控除項目の実質輸入の前期比が▲1.0%と第1次速報値の▲2.7%から1.7ポイントと実質輸出を上回る幅での上方修正となった。

 

●7~9月期のGDPデフレーターの前年同期比は▲0.1%で第1次速報値の+0.1%から0.2ポイント低下した。国内需要デフレーターの前年同期比は+0.5%で第1次速報値の+0.7%から0.2ポイント低下した。

 

●7~9月期第1次速報値では民間在庫変動・名目原数値・前年同期比寄与度は▲0.1%であったが、第2次速報値では同0.0%へと、実質季節調整値とは異なり、こちらは上方修正になった。この内訳に関しては雰囲気しか教えてもらえないが、4項目で一番大きなマイナス寄与は流通品在庫、次のマイナス寄与は原材料在庫、そして仕掛品在庫がプラス寄与で、一番大きなプラス寄与は製品在庫ということだった。第2次速報値でも4項目で一番大きなマイナス寄与は流通品在庫、次に大きなマイナス寄与は原材料在庫で、仕掛品在庫はプラス寄与で、一番大きなプラス寄与は製品在庫ということだった。

 

●ARIMAモデルにより内閣府が現時点での情報を使って算出・公表した、10~12月期の原材料在庫の季調済実質値前期差は▲102億円、仕掛品在庫の季調済実質値前期差は▲7,188億円である。

 

●「令和3年度の内閣府年央試算」の21年度実質GDP成長率見通し・前年度比+3.7%を達成するには、21年度残り2四半期で各々前期比年率+11.3%(前期比+2.70%)が必要であるので、達成は難しいだろう。20年度から21年度へのゲタは+1.8%である。なお、21年度残り2四半期が前期比+1.0%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+2.3%になる。21年度各四半期が前期比+2.0%だと21年度実質GDP成長率・前年度比は+3.1%になる。

 

 

●2月15日に公表される10~12月期の実質GDP第1次速報値を10月のデータから考察してみる。

 

●個人消費の供給サイドの関連データである耐久消費財出荷指数の10月分対7~9月平均比は▲9.7%の減少になった。同じく供給サイドの関連データである非耐久消費財出荷指数は同+2.4%の増加だ。商業販売額指数・小売業の10月分対7~9月平均比は▲2.8%の減少になった。一方、需要サイドの関連データでは、家計調査・二人以上世帯・実質消費支出(除く住居等)の10月分対7~9月平均比は+4.6%の増加である。乗用車販売台数の10月分対7~9月平均比は▲13.4%の減少である。項目により明暗が分かれている状況だ。

 

●家計調査と同時に発表される総務省の総消費動向指数は、個人消費の97%に当たる家計最終消費支出の推移を様々な月次データによる時系列回帰モデルによって求めたものだ。実質総消費動向指数の10月分対7~9月平均比は+0.8%の増加になった。また、需要サイドのデータを使用しないで、財とサービスに関する各種の販売・供給統計から算出している日銀の実質消費活動指数(旅行収支調整済)をみると、10月分対7~9月平均比は+4.3%の増加になっている。総合的に考えると、10~12月期の個人消費は、前期比増加に転じる可能性が大きいとみられる。

 

●設備投資の関連データである資本財出荷指数(除、輸送機械)の10月分対7~9月平均比は▲4.9%の減少になった。建設財出荷指数は同▲1.9%の減少である。総合的に考えると、供給サイドから推計される10~12月期第1次速報値の実質設備投資は、10月分の供給サイドのデータからみると前期比減少の可能性も否定できない、弱めのスタートである。

 

●実質輸出入の動向をみると輸出の10月分対7~9月平均比は▲5.8%の減少になった。控除項目の輸入は同▲5.1%の減少になっている。10月のモノ分だけでみると、10~12月期の外需の前期比寄与度はマイナスの可能性もあるが、サービスの動向や、11月分・12月分のモノの動向次第で前期比寄与度はプラス・マイナスどちらの可能性もある状況だろう。

 

●10~12月期実質GDP第1次速報値は、緊急事態宣言解除の影響で個人消費を中心に持ち直しという内容にはなろうが、今後の動向を注視していく必要があろう。

 

 

※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2021年7~9月期実質GDP(第2次速報値)について』を参照)。

 

(2021年12月8日)

 

宅森 昭吉

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

理事・チーフエコノミスト

 

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 理事・チーフエコノミスト

旧三井銀行(現三井住友銀行)で都市銀行初のマーケットエコノミストを務める。さくら証券チーフエコノミストなどを経て現職。
パイオニアである日本の月次経済指標予測に定評がある。身近な社会データを予告信号とする、経済・金融のナウキャスト的予測手法を開発。その他、「景気ウォッチャー調査」などの開発・改善に取り組んできている。「より正確な景気判断のための経済統計の改善に関する研究会」など政府の経済統計改革にも参画。「景気循環学会」常務理事。
著書に『ジンクスで読む日本経済』(東洋経済新報社)など。

著者紹介

連載【宅森昭吉・理事・チーフ エコノミスト】エコノミックレポート/三井住友DSアセットマネジメント

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